誰かの話し声が断片的に聞こえてきて、それが父親と
母親のものだと気付く頃にはずいぶん意識もはっきり
してくる
あれ…ここは……病院?
私、何で…
ああ
結局、そうだった
父親も、母親も、私を心配しているわけではない
『名井家の一人娘』を大切にしているに過ぎないんだ
だけど、今はそんなこと関係ない
口に出してしまって、改めて目から涙がこぼれ落ちそう
になる
そうだ、私のせいで落ちた彼は無事なのか
もう今は、キム君のことよりもそれが気になって仕方が
なかった
さっきから、この人達は何の話をしているの
勝手に首を突っ込んだ馬鹿者?
あの一年生に命令されてやった?
…キム君が、嘘の自供をしたってこと?
私が一言も言葉を発していないまま、男の刑事さんは
警備の人に追い出されようとしている
このままだったら、私の身代わりになって大怪我を
負ったツウィ君が犯罪者になる
また、私のせいで、サナちゃん達まで傷付ける
もうこれ以上、ツウィ君を巻き込めない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。