第32話

“ 夏服ってダサくない?”
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2020/04/05 12:49

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梅雨半ばを乗り越えた頃になると、

ジメジメとした蒸し暑さから段々カラッとした夏らしい暑さに切り替わり始めた。

制服もきっちり夏服に衣替えをし、それが不満なのか彼は口先を尖らしては私に言う。
吉田 ハギ
夏服ってダサくない?
茉白 サツキ
いや、私に言われても困るんですけど。
吉田 ハギ
生徒会で何とかならないの?
茉白 サツキ
ならないですよね?
吉田 ハギ
議題に出してよ、『夏服ダサくないですか?』ってさ。
そしたら変わるかも。
茉白 サツキ
あの、申し訳ないけど、私はただの図書委員長だからね?
そんな権限無いからね?
彼の言う、『ダサい夏服』にすっかり変わってしまった私達だが、

今日は私が最も嫌いなイベントがある。

友達
何やってるの、サツキ? 行くよー?
茉白 サツキ
うーん、…分かってるよー…
友達
サツキは相変わらず嫌いだねぇ、スポーツテスト。
茉白 サツキ
特に “ 20mシャトルラン ” は、ね。
スポーツテスト最後の強敵、ラスボス・“ 20mシャトルラン ” を倒すべく体育館に来ていた。


体育館内は網で中間地点で半分に分けられ、私達女子グループの向かいには同じクラスの男子達が群がっていた。

半袖にハーフパンツの体操着を来た彼らは舞台上や床に座ったり、
ぶらぶらと歩きながら友達と談笑していた。



その中でも一際目立つグループの中に彼は居るわけで。
茉白 サツキ

(ハギ……)



『シャトルラン、大丈夫なの?』

『大丈夫なんじゃない? シャトルランで倒れた事とか無いし。』



心配になった私は、彼が私を今朝迎えに来てくれた時に聞いてみた。

彼は心配しすぎだと笑っていた。

そのまま学校へと共に登校し、とうとうこの時間を迎えた訳だが、私は正直不安しかない。


(…)
茉白 サツキ
ハギ…
友達
………ね、サツキ。あのさ、
茉白 サツキ
何?
友達
声に出てるよ?
茉白 サツキ
?!
友達
最近ずっと吉田くんのこと見てるしさー、仲良いしさー。
茉白 サツキ
…っ、
友達
ぶっちゃけ、どういう関係なの?
茉白 サツキ
どういう、関係…?

(…)


改めて関係を問われると、


一体私と彼との関係が何なのか答えが出なかった。



勿論、私達は付き合ってないから “ 恋人 ” や “ 彼氏・彼女 ”という関係ではない。

かと言って、“ 友達 ” という言葉で括れる関係でもない気がする。

もっと大切で、もっと大きい。


(“ 親友 ” とか…? …にしては、距離が近すぎるか…いや、有り得なくはない…か?)
友達
サツキ、なんでそんなに百面相してるの…
茉白 サツキ
ハギとの関係に似合う名前を探してる。
友達
何それ、そんなに複雑なの?!
あははっ、サツキってばホント真面目すぎ!
茉白 サツキ

(駄目だ、似合う言葉が見つからない…)


隣で爆笑する友達の隣で、私はじっと網の向こうの彼を見続けた。



(私達の関係って…


何ていう言葉が似合うんだろう─────)


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