五月蝿く鳴いている蝉の音に、じりじりと皮膚をさしてくる日差し。時々吹く風が若葉の匂いを運んでくる。
夏だ。夏が来たのだ。
近くに置いていたさらに手を伸ばし、水分を多く含んだ桃色の西瓜を口にいれるとサクッと言う音とともに甘味を全く感じ無い、みずみずしい水分が口の中に広がり、思わず顔をしかめる。
しまった。熟しきれてない西瓜だったようだ
それでも、身体の中に溜まった熱がじわじわと涼んでいくのがよく分かる。
口の中に溜まった西瓜の種を庭の端に置いてある瓶に向かって吐き出す。種は緩やかなカーブを描き、手前で落ちた。
風鈴の音を聞きながらあなたの名字あなたの下の名前は縁側にゴロッと横になり夏特有の少しジメジメとした空気を思いっきり吸い込んでは吐き出していた。
ここは祖母の家。最近都心から一人で引っ越してきた。
理由は両親の他界。
両親は崖崩れに巻き込まれて、亡くなった。1か月前の話だ
実感なんてものはいつまでたっても沸かない、本当にあっという間だった。
祖母が引き取ってくれたまではよかったが、腰を痛めてしまい、そのまま手術...
そして私は1か月ほど一人で暮らさなくてはならなかった。
スマホを見れば約束の時間が迫っている。
縁側の雨戸を閉めながら、提灯の場所を思い出す。
というのも、今日はクラスメートに誘われ肝試しに行くことになった。
転校してきたばかりの私の気を使って親睦を深めようとしてくれているのだろう。
しかしこの判断を私は誤った。行かなければ、よかったのだ











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!