第4話

#3 一旦停戦。
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2023/12/17 12:19
神威「もうそろそろ着くんじゃない?」

窓から下を見下ろす。
阿伏兎「あー、そうだな…」

阿伏兎は嫌なのだ。宇宙最強と謳われる人物とこれから殺し合いが始まる。生きたいとは思わない。が、勿論死にたくはない。

神威「あーぶーと。そんな気力じゃ負けるよ?もっと元気にいこうよ。」

阿伏兎「あいよ。」

団員「着陸しました!!」

神威「おっ!来たね〜!よし、全員出動!」

団員達「「うおぉぉぉぉ!!!」」


『はぁ。そろそろ来るかな。どんな奴らかは知らないが、久しぶりに運動出来そうだ。』

遠い空を見つめて呟く。

『ん、アイツらか…?』

数百メートル離れた先には、先程まで居なかった集団が居る。

団員達「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

『ははっ、やっぱりな。面白そうな連中だ。』


[バゴオォォォォン]


『うるさいな。なんだ』

冷静に振り返る。さっきまで座っていた岩が粉々に砕けている。

神威「君が噂の最強?そうは見えないけど」

振り返った状態からして真後ろに誰かが現れる。
殺気を纏ったまま穏やかな声色で話しかけられるが、驚く事も怯えることもせず返す。

『そうだが。お前は春雨第7師団か?』

神威「えー、ちょっと期待はずれかも。そこら辺のやつよりは強いのかもしれないけどさ。
え?俺の事も知ってるの?そうだよ。」

出会い頭にも関わらず、神威はあなたを思いっきり殴ろうとしている。

『殺気を殺せてないぞ。わざとか?訓練不足か?』

神威の攻撃を普通にかわすあなた。

神威「あり?かわされちゃったか。だって殺気なんて殺す必要ないじゃん。結局最後は死ぬんだよ?」

攻撃をかわされた事には何の感情も抱かず、目をぱちぱちとさせながらあなたの問に答える。

『そうか。私がどうこう言う事じゃないが…お前の殺気は攻撃を避ける為の感覚にもなりうる。私はオススメしないな。』

神威「えー、それは困るな〜。じゃあ連続攻撃すれば良い?」

思ってもない癖に"困る"なんて言ってみる。
からかうように発言した後、蹴りやらパンチやらを続けて仕掛けてくる神威。

『駄目だ。発想自体は悪くないが、肝心なお前の力量が大いに不足している。私には勝てないな。』

全ての攻撃を避け、3割程度の力で素早く神威を蹴り飛ばす。

神威「なに?ごめん、聞こえなかった。もう1回言っt……」

あなたの発言にイライラする。
(誰の力量不足だって?こっちはまだ本気なんて出してない。)
そんな事を考えるや否や、気づく間もなく蹴り飛ばされる。

神威「……ッッ!!お前……」

受身を取り顔を上げるとそこには既にあなたの姿が。

『お前を殺すのは少し勿体ない気がする。今回は殺らないでおこう。』

神威「なにをふざけた事……君ごときに殺られるわけないだろ」

再び笑顔を戻すと物凄い速さであなたの足を取る。

『ま、そうなるよな。それじゃあコレしか方法はない。恨むなよ』

足元を掬われるがそんな事ものともせずに体幹を保つ。そのまま傘で地面を思いっきり突き、地が割れる。

神威「え?何言ってるの。これで俺を倒したつもり?」

『言ったはずだ。お前を殺すのはあとの楽しみにすると。一旦黙ってくれないか?』

そう告げると、静かな微笑みを浮かべたまま目では追えぬ早さで神威の首元に手刀をかます。

神威「ぐっ、………、!」

海坊主の息子、鳳仙の弟子であり何年も鍛え続けた神威でさえもあなたの力には耐えられなかった。意識を保とうと足掻くが視界は狭窄してゆくばかり。パタリとその場に倒れる。
団員達が神威とあなたの元に辿り着くまでの一分足らずでこれらが起きたのだ。
影から見ていた阿伏兎は本能的に感じ取る。

"逃げるが勝ちだ"と。

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