大「ゆき……?」
私たちとの距離はやく3m。
彼女は胸を打ぬかれ、そのまま倒れた。
大「…ゆき、ゆき……」
ゆきさんの元へ行こうとする彼を私は必死に押さえた。
「大介さん、動かないで!!!
お願い!!!!!!!!」
彼までも死なせるわけにはいかない。
ここで私が手を離したら…
大「ゆきが……ゆきが!!」
「もう助からない!!!!!!」
大「あなたちゃん…離してっ」
「お願い!!
許して…ダメなの…もう!」
彼女の周囲には赤い液溜まりが出来ていた。
指の一本も動かない。
彼女はもう…
「この音…」
微かにサイレンが聞こえた。
誰も気がついていないみたい。
それは、オーナーも同じ。
Ow「無様だな」
「無様なのはどっちよ笑」
Ow「口の利き方を教えなかったのか?
お前の馬鹿な母親は」
「教えてもらったのは
ズル賢く生きて行く術だけです」
学校にもろくに通わせて貰えなかった。
青春なんてなかった。
居場所なんて、何処にも感じたことなかった。
そんな私に愛をくれた。
彼のために私は出来ることをやる。
「オーナー、もう終わりです」
地下室を下る音。
Ow「お前がまだ残っている」
あと少し。
「残念、貴方の負けです」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!