第74話

終局
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2021/11/05 09:00 更新


〜国見side〜



金田一「…夜野田大丈夫かよ、さっきも凄い音したし。」


そう話しかける金田一の言葉をガン無視して、俺はとばりという学校を覆うドーム状の外から旧校舎から目を離さなかった。





頼む。神様でも何でもいいからあなたのこと助けてくれ…。


例えそれが伏黒でも、棘先輩でもいい。…あなたが生きてくれてさえいれば。






そう考えている俺の肩を、後ろから誰かがポンと触れた。






岩泉「…お前が1番分かってたんだろ?夜野田の強さとか、本当のあいつの姿とか。」


国見「岩泉さん…。」


岩泉「1番あいつの事分かってる奴が信じてやんねぇで、誰が夜野田を信じるってんだよ。」




誰からも頼られる青城のエースは、「…励ましなんて慣れてねぇけどさ。」と自分を呆れるように笑った。



国見「……いえ、岩泉さんのおかげで元気でました。」


岩泉「そっか。」


国見「ありがとうございます。」



そう言って、真正面から岩泉さんと目を合わせると、照れくさくなって俺も同じように笑った。






及川「あ…!あなたちゃんの先生の…!!」



背後で驚いたようにそう叫ぶ及川さんの声に、俺も岩泉さんも思わず振り返る。



すると、及川さんの視線の先には、白髪で長身で目隠しをした全身黒ずくめの男がこっちに向かって走ってきた。




岩泉「…だけじゃねぇぞ。なんか、もう1人いる。」


その言葉通り、怪しい男の隣には長い髪の大人っぽい女の人がいて、男の少し後ろから同じように走ってきた。





五条「あれー!?なんで君たちここにいるの!?」



向こうも俺たちの事は覚えていたようで、息を整える事もなく俺たちに話しかけた。




及川「俺たちは自主練しに来たんですけど、突然先生たちに追いやられて…」


??「五条、こいつらと知り合いか?」


大人っぽい人だなぁ、と思っていた俺の思考とは裏腹に、言葉遣いは高校生男子さながらでその場の全員が絶句した。



五条「あぁ、あなたがマネージャーしてる男子バレーボール部の部員たち。」


??「…噂のは?」



“噂”…という言葉に嫌な予感を覚えると、男は「あ〜やっぱ硝子も気になっちゃう?笑」と不気味に笑う。




直後、いきなり背後から両肩を叩かれ耳に陽気な声が響く。





五条「彼が、噂のあなたちゃんの彼氏くんでーす!」





俺は驚愕と恐怖を感じ、思わず身体を硬直させる。


いつの間に背後に移動したんだ…?さっきまで目の前で、あの女の人の隣で話していたのに…



そんな思考で頭の中がぐるぐると混乱していると、男の手のひらが俺の顔の前にかざされる。




抵抗出来ない速度だから、今度は何をされるんだ…?と、ギュッと目を瞑ると、





五条「ほーらー、そんな硬くなんない!もっとリラックスして〜!笑」



その男はぐにぃ、と俺の両頬を指で引っ張った。




予想外すぎる行動にどう反応していいのか分からなくて、別の意味で固まっていると、さっきまでの明るい声と正反対の低い声が俺の耳元に囁かれた。





五条「……大丈夫。あなたの強さはひとつじゃないから。絶対に勝って戻ってくるよ。」



バッと一瞬で離れると、男はケラケラと笑い「なんてったって、最強の僕が教えた生徒だからね〜!」と最初のように明るく笑っていた。





掴みずらい…とげんなりしながらも、さっきの言葉が自分にとって心強いものだったのも確かだったから、余計に少し腹が立った。



















〜あなたside〜



領域が、光が引くようにスっと解けて消えると、真っ先に棘先輩が私の元へ駆けつけた。



棘「ツナ!明太子…っ(あなた!今のって…)」


あなた「……領域展開です。初めて、だったんですけど。」


棘「しゃけしゃけ、高菜!(凄いじゃん、いつの間に!)」


あなた「ギリギリ、でしたけどね……、」




あれ、おかしいな…。呂律が上手く回らないし、立ってるだけなのに頭がクラクラする。





恵「あなた…お前、頭から出血してるぞ、」



さっきは倒れ込んでいた恵も、この時間の間で少し復活したらしく、ゆっくりではあるが私の元へ近づいてきた。





あなた「あ…、“熔化光”で攻撃しようとした時に、接近戦だったから相手から食らって……」


棘「すじこ、ツナツナ?(特級呪霊は?)」


あなた「ちゃんと全部熔けました、」


棘「…しゃけ、(よく頑張ったね、あなた。)」



頭を怪我した私を気遣って、棘先輩は優しく私の背中をさすった。


その優しさに安心して息を大きく吐くと、私は大量の呪力の消費の影響で全身の力が抜け、屋上に倒れ込んだ。



同時に、倒れ込んだ際に右腕の激痛が私を襲う。




あなた「い"っ……た、!!」


情けない程に掠れた声でそう叫ぶと、棘先輩は慌てた声で「高菜!?(骨折したの!?)」と私に尋ねた。



あなた「…頭部を殴られたのと、右腕の骨折程度で済みました。……あとは、呪力使いすぎて、立ってらんなくて…」



仰向けになった私の視界には、一面の雲ひとつない空が広がっていたが、帳が解けた事までは理解が追いつかなかった。





あなた「……恵。なんで、私のこと…庇ったの…?」


頭が朦朧とする中、それだけは聞いておきたくて、私は視線を空に向けたまま傍にいるであろう恵にそう聞いた。



恵「なんで、って…守るためって以外の理由あるかよ……」





まただ。また、私は恵に助けられたんだ…。



あなた「やっぱり、…私は恵に頼ってばっかりだ…。」




恵から、まだ“守るべき対象”として見られてる事が悔しくて、…でも今の自分の実力ならそうなるのも納得で。





そう言って自嘲的に笑う私の横から、すぐに「違う。」とハッキリした迷いのない声がした。



声のした方に首をそっと向けると、屋上に座り込む恵が私を優しい眼差しで見つめながら、口を開いた。





恵「俺だって…、今回はあなたに頼ってばっかだった。お前は十分強くなったし、今日一番頑張ったのはあなただろ。」




そう言って微笑む恵に、私の瞳から勝手に透明な雫が流れ、コンクリートにシミをつくった。





恵「お前が言ったんだろ、“大事な仲間を失いたくないって思うから強くなれる”って。…それは、俺も同じだから。」



棘「しゃけ。(僕も同じ)」




あなた「恵…、棘先輩……、」







よかった……守りきれて。誰も死なないでくれて。



私の居場所が高専にもあるって、そう気づけてよかった…。








段々と閉じていく瞳と遠ざかっていく意識の向こうで、私は穏やかに笑みを浮かべた。


















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