第73話

結末
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2021/11/04 09:00 更新



あなた「恵っ………!!!」




目の前に広がる真っ赤な飛沫。それは紛れもなく、恵の頭部から流れる鮮血だった。






そんな恵にもう1発入れようと、大きく振りかぶる呪霊に、私は容赦なく“熔化光”をぶつける。



呪霊「なっ……!?こ、れは…………カハ…ッ」




“熔化光”の予想以上の呪力に驚いたようにそう呟くと、口から血を吐いて屋上に四肢をついた。




その隙に私は恵を抱えると、素早くその場から距離をとる。






呪霊「…いい判断だな。よく私の攻撃に気づいた。」


あなた「めぐみ……、ねぇっ恵!!」


棘「あなた…1回落ち着いて、」




棘先輩は後ろから私の肩を掴んで止めるが、私の意識も声も全て恵へと向けられていた。





恵「……これぐらいで死なねぇよ。平気だって、」



閉じていた瞼がゆっくりと開き、ぼんやりとしたまだ焦点の合わない瞳で、恵は私にそう告げた。




あなた「でも……でもっ、出血が止まらなくて、」


恵「直に止まるから。とりあえずお前は落ち着け。」


あなた「やだっ……、恵。恵…っ!」



恵の声も届かず、私は首をひたすら横に振って唸り続ける。






パシッ




そんな私の手首を掴む力の強さに、私はその主を見る。





恵「……落ち着けって、」


あなた「恵……。」


恵「あなた考えろ。お前が今すべき事は何なのか…。」




恵の真っ直ぐな言葉と視線が、段々と私の乱れた心を静めていく。








私の、すべき事は________




あなた「………あいつを、倒すこと。」


恵「ちゃんと分かってんじゃねぇかよ…」



ギュッと、握る手に力を込められ、私も応えるようにその手を握り返す。






くよくよしてる場合じゃない…。あの怪物を、何がなんでも倒さないといけないんだ。










私はそっと立ち上がり、鋭い視線を呪霊へと向ける。




呪霊「やっと戦う気になったか。…これだから人間の心は脆く、弱々しい。情を掛けるなんぞ無駄でしかない。」


あなた「それは違う。」




自分の言葉を、思考を、理論を否定された呪霊は、バッと顔を上げて私を見つめ返す。




あなた「…大事な仲間を失いたくないって思うから、大切な人を守りたいって思うから、私は強くなれる。」


呪霊「……理解できんな。」


あなた「……なら、堅苦しいあんたの頭でも理解できるような証明、してやるよ。」











________思い出せ、あの時の恵を。






八十八橋の事件で恵と私、悠仁と野薔薇が別れて戦ったあの時…。



頭部から血を流しながら、今まで見たことの無いように笑う恵に初めて“怖い”と感じたあの時。







あなた「……私だって、やってやる。」



自分の思うがままに片手を空にかざして、指を組む。








想像イメージしろ。もっと自由に…限界を超えた未来の自分を。




















あなた「術式展開、“ 金碧輝煌きんぺききこう”」





瞬間、白い光が私と呪霊をその球体の中に閉じ込めた。










棘「ツナっ!!(あなたっ!!)」


棘先輩が叫ぶ声も、今の私には届かなかった。









白い光の空間に、私と呪霊の2人だけ。






呪霊「……お前、これが初めてだな?」


領域を展開されても尚、態度を崩さない呪霊はさすがは特級としか言いようがなくて、



きっと今までも領域展開は受けてきたんだろう…と察する。





…となったら、相手も領域展開が使えるのかもしれない。




あなた「領域を展開される前に倒さないと…」





そう覚悟を決めると、私はこの空間の発光に身を隠す。



呪霊「撹乱か。逃げているだけでは私を倒せんぞ。」




霧のように白く先を見通せない眩い光が、視界を狭める。




発砲音で居場所を察知される事を恐れた私は、胸元に伸ばした手を止めて、手の平をかざす。




あなた「融解溶明、“露光弾”!!」



周囲の光よりも更に眩しく熱い光の弾が、私の手から放たれ、曲線を描きながら呪霊の脚部にヒットする。







領域内で発動した術者の術式の絶対命中。


これも、領域展開の大きな特徴の1つだ。






そのまま体制の崩れた胴体に一気に近づき、私は最大限の呪力をその手に集める。






あなた「これで…終わりだ!!」



がら空きの胴体に、手の平を思いっきり広げて伸ばした。





呪力が今にも溢れ出して、己の手までを溶かしてしまいそうな程、熱い自分自身。






呪霊「甘い……!」



その伸ばした私の腕を掴み、バキッと中の骨が折れる音が耳にハッキリと残った。



握りしめられる痛み、折られた部位、骨が腕の内側の肉に突き刺さる絶痛の感覚。





あなた「ぐっ………、!!?」



続けざまに頭にも重い一撃が加わり、頭がクラクラとジンジンとして、響く痛みとうるさいのが私の思考を支配した。









…だが、その痛みに恐怖に、私は怖気ずくことなく、頬を伝っていく生暖かい鮮血を拭わずにそのまま突っ込んだ。








呪霊「な、んだと……っ!?」





私を視界に捉えて大きく開けたその目が、今触れた硬くゴツゴツとした身体が、記憶の中にこびりついた。







…きっと一生、この光景を忘れないんだろうな。なんて思いながら、私は溜めた呪力を一気に押し出した。






あなた「融解溶明…“熔化光”!!!」














その直後、周りの白い光と同化するように、呪霊が白い光に包まれて熔けていった。












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