ふわっち が まさか あんなに
暗示にかかりやすい 気質だったとは 。
まぁ確かに 、催眠術の企画の時には
かかっている側の方だったし … 。
昨日は 、あの後 そのまま枕を共にしてしまい 、
今朝は 彼より早く目覚めたのを良い事に
置き手紙だけ残して そのまま出てきてしまった 。
手に持っていたスマホが震える 。
…もちろん 、情を交わしあった相手からの着信だ 。
1時間前くらいから10分ごとにかかってきている 。
置き手紙は残したのにな 。
□ ■ □ ■ □ ___ …
ふと思い立ち 、僕が 訪ねたのは 委員長の家 。
昨日の彼の様子を思い返してみれば 、
僕を見つめるその瞳はとても熱かった 。
あの様子からして 媚薬的な何かが
入っていたと言われた方が納得できる 。
嘘ではない 。
僕は別にそんな感じはしなかったけれど 、
彼は 甘い と 言っていたのだから 。
聞けば 、例の 氷砂糖入り紅茶に感動した委員長は
様々な同僚たちに 紅茶を振舞ったらしい 。
その中には ふわっち も 含まれていたという事で …
その言葉を聞いて 、
頭が殴られたような 衝撃が 走った 。
あれは ミヒェルゼンというもので
惚れ薬で ないことは とっく に 知っていた 。
では なぜ あのような言動を取ったのか 。
イヤ な 考えが 頭の中を 支配し始める 。
… あぁ 、
____ … 遊ばれていたんだ
□ ■ □ ■ □ ___ …
委員長には申し訳ないけれど 、
事の原因となった紅茶をこれ以上 見たくなかった 。
そして ふわっち はコレを美味しいと言っていた 。
だから 、コレは もう あげることにした 。
紅茶の茶葉の缶を 彼に差し出す 。
これを置いて 、今すぐにでもここを去りたかった 。
例え ほんの戯れに 彼が 僕を 遊んだ のだと しても
彼を嫌いになることなど 出来るはずもない 。
けれど 、今は 彼の顔を見るのが辛かった 。
急激に込み上げてきた感情に 、
とうとう 張り詰めていた糸が切れる 。
きっ 、と 顔を上げて睨むと 、
その拍子に 涙が こぼれ落ちた 。
僕の涙を見て 、彼の瞳が 見開かれる 。
話し方を敬語に戻し 呼び方も戻せば
彼の眉間に 皺が寄った 。
遊んだ相手に 何をそんなに
不機嫌になっているのだろうか 。
彼の ちょっとした冗談に
本気で傷ついて泣くような自分を 、
これ以上 見られたくなかった 。
だから 踵を返し 走り出そうとしたとき 。
後ろから 強い力で 抱きすくめられた 。
こんな力があったのかと思うくらいで 、
むしろ 掴まれた腕が少し痛いくらいだった 。
フワリと頭が 僕の肩に乗せられ 、
彼の柔らかい声が 耳の近くで 発される 。
やはり 。
腕ごと 抱え込まれている せいで 、
拭うことすら出来ずに ぽたりぽたり と垂れる涙が
ふわっち の 袖を 濡らしていく 。
…なんだって ? … 今 、何と言った 。
彼の言葉に 色々な感情が押し寄せてきて 、
上手く 思考が まとまらない 。
だけど 、と呟くような言葉の後 、
彼の額が ギュッと 僕の肩に埋められた 。
耳に吹き込まれる 、柔らかいけど
拒むことを決して許さないような 、そんな声 。
肩越しに見える 銀髪が フワリと揺れる 。
僕を抱きしめる腕の力は少しも緩まない 。
まるで逃がさない 、とでも言うように 。
昨日の 彼の言動が 次々と 頭を過る 。
… あぁ、アレは 冗談なんかじゃなくて 、
… 好きという故の
想いが込められている言葉だったんだ 。
もしかしたら 、彼は 今までにも
そうやって 愛を伝えていてくれたのかもしれない 。
一瞬 ふわっち の 拘束 が 緩んだ 隙に
くるり と 振り向いて 彼と目線を 交えると 、
狡い彼は 見開いたアメジストを 細め、
正面から 僕を抱きしめて 再び 肩に顔を埋めた 。
そして 次の瞬間 、
首筋に優しく噛みつかれる感覚が駆け巡った 。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。