ぽたぽた、と 小さく音を立て、
アスファルトに ビールが落ちる。
やっちゃった、と
思った時には もう遅くて、
酒の回りきった頭には、
自制心の ストッパーが緩んでいた
空になった アルミ缶を
ぐしゃり、と 力一杯潰してから
欠伸をする。
ぽかーんと 立つ3人を置いて、
すたすたと 暗い夜道を歩く。
一番最初に声を掛けてきたのはローレンで、
駆け足で 追いかけてきた。
はあ、とわざとらしくため息をついて。
ド正論は聞きたくねー。
やり過ぎたのはわかってる。
向こうが警察に頼れば 多分何かしらの
注意や罰は 俺に回ってくるだろうし、
それがメディアにバレたら困んのも俺。
向こうは口で色々言ってきただけだし、
それに対して俺は缶ビールぶっ掛けちゃった
わけだし。明らかに非はオレ。
なんて言ってたんだっけな。
居酒屋を出たら、視線を感じた。
視線の先を辿ると、若い男が4人ほど。
ファンかと思っていたらこちらに近づいてきて、
なんて言ってたんだっけ。あの瞬間は
あんなに頭に血が昇ったのに、今になったら
良く思い出せないような。
売れっ子気取りとか、薄っぺらい歌詞とか、
クオリティが低いとか、アイドル売りしてるとか。
なんかそんな、くだらないこと。
そう、くだらないこと、だったのに。
遅れて合流してきた 三枝は、近くの自販機で
水を買ってきてくれたらしい。半ば強制的に
押し付けられた水を、癪だけど
仕方ないから そこそこ喉に流し込む。
酔ってたから"やってしまった"ことだと
3人は思ってるのかもしれないけど、
俺は別にシラフでもああしてたと思う。
調子乗ったなぁ、と 少しだけ後悔をしたり。
まあ、もうやってしまったことを後悔しても
仕方ない。
主語がなくとも、この界隈に何年もいれば
わかること。週刊誌に撮られていたかな、という。
自分らの知名度を 高く見積もりすぎている
部分もあるかもしれないが、正直
いつ撮られてもおかしくないほど、
ナノカルトは 大きくなっていると 思っている。
有難いことであり、窮屈なことだ。
撮られてたらまた世間から叩かれんのかなぁ、
この間 テレビ出た時仏頂面すぎて叩かれた
ばっかりなのに。めんどくせえなぁ、と。
でも今回に関しては、俺が悪いのは確か。
事実だけを並べてみれば、外野からの
声を真に受けてしまってビールをぶっかけた。
世間から責められるのはもちろん面倒だが、
メンバーからやり過ぎだ、と怒られるのも
めちゃくちゃめんどくさい。
特にローレンは俺と同じでよくキレるくせに
こういう"面倒事"には厳しいしうるさい。
世間体を気にしてる訳じゃないけど、
俺が叩かれるのは嫌らしい。知らねーそんなもん
お前らのためを思ってやってやったんだぞと
言っても、余計なお世話と咎められるだけ。
こんなにグループを思ってんのって
俺だけなのかなーとか。実際。
でも、1番最初に口を開いたのは意外な奴で、
擁護されるとは思っていなかった。
でも意外と、こいつらも満更じゃなさそうで。
そんな様子を見て、つい笑みがこぼれそうに
なるので、口元を覆って隠しておいた。
今日くらい、感謝を伝えてやっても。
まあ、もう怒られてもいいか。
心強いバックが控えているから。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。