第7話

それぞれの罪
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2024/04/10 06:44
「それでは、お世話になりました。」
「………あぁ。」
出発のときでさえ、ロロノアがお面を外すことは無く、3人は東の方角へと旅を再開した。
「……………ロンド…………そうか。…………ワシも、罪を償うべき、なのだな。」
ロロノアは静かにお面を外し、彼らの後ろ姿をいつまでも、いつまでも、見つめていた。
その顔立ちは、微かに、少年の面影があった。
「東の方角に行った…とは聞いたものの、アバウトすぎてどこへ行ったかあまり分かりませんね。」
ルミシェが先程買った地図とにらめっこしながら、ため息まじりにそういった。黒山羊は「ふむ」と少し考えたように目を閉じ、そして開けた。
「確かこの先には、墓地があると聞いた。墓地には祓魔師が来ることが多い。その可能性を辿ったのだろう。」
「え、墓地には祓魔師がよく来るんですか?」
少年が黒山羊に聞くと、黒山羊はルミシェと共に地図を確認しながら答えた。
「まぁ、悪魔に殺された人間など山程いる。その償い…というか、私達にとっては自己満足にも等しい行為だが、祈りを捧げることが多い。……む、やはり、この先には大きな共同墓地があるな。」
「あぁ…」
誰も彼も、一つは償わなければいけない罪があるのだろうか。少年はそんな疑問を持ちながら、不安定な英国の天気を見上げていた。
「………あ、雨…」
「え?あ!ホントだ!もう、濡れちゃいます!」
ルミシェが天気に対してどうしようもないのに怒るものだから、少年は可笑しくなって笑ってしまった。
近づく、不穏な空気を悟りつつも。





ワシはあの時、何も出来なかったくせに、逃げた。ただ一人、あの子を取り残して。
あぁ、あの子が壊れてしまったのはワシのせいなんじゃ。
まだ小さなあの子に、大きな、大きな罪を背負わせてしまった。
神は許して下さるだろうか。愚かなワシを。
か弱きあの子を。
ワシがもっと、彼奴等あやつらを説得していれば。ワシがもっと、あの子に愛を捧げられたら。
「あぁ、主よ、許し給え。」
今日も、ワシは面を被る。
悪魔に取り憑かれて死ぬのは、祓魔師の一生の恥。
せめて、あの子のためにも、ワシは誇り高き祓魔師[エクソシスト]でいなければ。
ならば、死ねない。まだ死ねない。
まだ生きて、罪を償わなければいけない。
心は悪魔に見られてはいけない一番の場所。
外側から塞げば、悪魔は心に入り込むことは出来ない。
今日も祈りを捧げる。




どうかあの子の望みが、叶いますように。





次回「生者の定め」

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