身体が どんどん 下へ… 下へと…
ただ… ただ… 墜ちて ゆく…
そんな 感覚から… ぼんやりと…
目が 身体が 頭が…
覚醒していく 感覚に… 襲われる。
じわじわと 瞳に 光が入ってきて…
ゆっくりと 瞬きをしても…
その景色は 消える事は… 無かった。
瞬きを する度に…
瞼が 塞がって… 張り付くような
ねっとりとした 不快感を 感じる。
僕の 目の前には…
真っ白くて 無機質な
見たことがない 天井が あって…
どこからか 等間隔に 同じリズムを刻む
電子音が… 聞こえて… くる。
だんだんと 感覚が戻ってくる
身体や 足や 手の指先を
どうにか 動かそうとしても…
頭から発する 身体への信号は…
その 神経や 筋肉へと うまくは
伝わっていかない ようだった。
それでも なんとか 動かせる 眼球だけを
ゆっくりと あちこちへと 向けて…
僕は いま どうなっているのか…
ここは… 一体… どこ なのか…
どうにか… 探ろうとした。
そして…
周りの景色や 今までの 記憶から…
なんとなく いま 自分がいる場所は
おそらく 「病院」… なんだろうか… と…
ゆっくりと 理解が 追いついてくる。
ぼんやりと 横にある窓の外で
ゆらゆらと 風に揺られる 木々が見えて
ゆっくりと 息を 吸っては 吐いて…
自分が ちゃんと ここに…
生きて… 「存在」していることを…
だんだんと 認識… していく。
うまく動かせない 冷えた 指先に
どうにか やっと 流れている
なまあたたかい 血液の… 流れ。
身体の あちこちに 感じる
貼り付けられた 拘束具のような…
器具や 長い… ケーブルの 感触。
乾いて 突っ張った 顔の 皮膚や…
むず痒く感じる 重たい髪や…
慣れない 肌触りの 生地…
その すべてが…
僕が まだ 「 生きてる 」と…
何も出来ない… 動けない…
固まったままの 無気力な 僕に…
否応なしに… 訴えかけて くる。
そして…
ぼんやりした 記憶の 欠片の中から…
じわじわと 「忘れてはいけない」…
とても 大切な ものを…
ゆっくりと… 思い出して… いく。
…あの時…
あの 恐ろしい
あの 事故の 瞬間…
僕は たしかに ルナの入った
あの キャリーを 離さないように
しっかりと… 抱きしめていた。
猛スピードで こちらに
躊躇いもなく 突っ込んでくる
車と… 轟く エンジン音と
あちこちで 阿鼻叫喚が 響くなか
人々が 逃げ回る… その… 中心で。
僕は たしかに…
ルナを ぎゅっと 抱きしめていた
…はず… …なのに。
…きっと… …ここは… …病院だから…
ルナとは 一緒には いられないから。
僕が ケガをしていると しても
ルナは 絶対に… 大丈夫な はず。
ルナは 元気で… 無事な… はず。
ルナは 絶対に 生きてる はず。
ちゃんと しかるべき 場所で
守られて 安全に 穏やかに…
過ごしている… はず なんだから。
絶対に 大丈夫… な はず…
…だから。
だから… …早く…
今すぐに ルナに…
会いに… …行かなきゃ。
もっと たくさん 色々な事を
考えたい 気持ちとは 裏腹に
頭は ズキズキと 痛みを増して…
…落ちついていた 心臓が…
血管が 身体中の 神経が…
ドクドクと 暴れるように ざわめく。
どうにか 微かに 動き始めた
指先で その辺りを まさぐって…
手に 触れたものを なんとか
握りしめて… 軽く 持ち上げる。
どうにか 視線を送った先の 手には
使ったことは 無いけれど
知識の中の 記憶に 埋もれていた
ナースコールの 器具が… 握られていた。
曖昧な記憶と 曖昧な現実の 狭間の
その 途切れそうな 意識のなかで…
僕は どうにか 力を 振り絞って
その器具の ボタンを… 押した。
the story continued…













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。