獪岳が最終戦別に向かってから5日。
私は獪岳を驚かせたい一心で、桑島さん協力の下
洗濯から始まり料理・掃除などの家事、それから
着付けやお風呂などの自分の世話を完璧にこなせ
るよう努力していた。
今日はいつぞやにボロついたネグリジェを買い直
しに街に来ていた。その休憩でふらっと立ち寄っ
たカフェの二階で窓の外を眺めると綺麗な青空が
瞳を染めていって
そう無意識に呟いた。そんなときだった。
一階で発された怒号が二階まで充満した。
そこにいた客は私含め肩を揺らして動揺を見せた
が、それは誰かの声によって制止された。
甲高い声はみんなの耳をツン刺した。なんだ…た
だの痴話喧嘩か、びっくりさせないでほしい。
そう思って珈琲を飲みきり階段を降りて外に出た。
お会計をしようと財布に伸ばした手を掴まれる。
この声はさっき痴話喧嘩をしていた若い男の方だ
と瞬時に分かった。
唐突なプロポーズに目を丸くするが、名前を聞い
て思い出した。我妻善逸。鬼殺隊の隊士で獪岳の
弟弟子、そして獪岳の頸を切った張本人。
イメージの違う黒髪はまだ雷に打たれる前、桑島
さんに拾われる前だと理解することは容易かった。
気まずい空気に一石を投じたのはその店の店主で
先ほど善逸と言い合いをしていた相手だった。
本当は原作の流れを変えてしまうのが怖いので、
なるべく関わりたくないというのが本音だ。ただ
店主のげんなりとした表情と、私の腕を掴んで離
さない善逸の手に同情した。
快諾したわけでは決してないが、この面倒そうな
状況を抜け出す手段としては最適だと判断した。
ただ、その選択が更なる面倒ごとを招くとはこの
ときの私は考えていなかった。
大きな通りを並んで歩き始めて数分。善逸は私の
方を横目で見てから徐に口を開いた。
名前も知らない相手にプロポーズするのはさすが
といったところか…。令和だったら完全に変人扱
いされるであろう。いや、どちらかといえば変態
扱いかな。
甲高い声が再び私の鼓膜を貫いた。ほら、やっぱ
こうなる。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!