言われるがままに動かないと、もっと痛い思いをするから。
渚に呼び止められても、俺はお父さんの元に行った。
もう、いいんだよ。
俺はこの人の駒だから。
この人に動かされて、どうせいらなくなったら捨てられるただの駒だ。
今更反抗したって意味もない。
こんなの、渚のお母さんと同じだ。
渚のお母さんはあまり手をあげないけど、お父さんは手をあげる。
そこだけが違うところだった。
俺は笑顔を作る。
お父さんは、笑顔を見せると機嫌が良くなるから。
頬に痛みが走る。
勢いのまま、俺は倒れた。
頬はジンジンとしていて、お父さんが俺を見下ろす。
あぁ、痛い。
いつも通りだけど、今は外だから砂利が痛い。
みんなに見られている中で殴られるのは、なんて惨めなんだろう。
気を失いたい。
もう、死にたい。
みんなが俺とお父さんの間に壁を作る。
お父さんの姿が見えなくなって、俺は安心してしまった。
みんなの背中が頼もしい。
なんで、今まで突き放して来たのに。
みんなは優しすぎる。
イリーナ先生はそう言いながら、お父さんの前に出た。
お父さんの姿は見えないけれど、みんなを前にして驚いている声が聞こえた。
俺は神崎さんに支えられて、どうにか意識を保っていた。
神崎さんが声をかけてくれているのをやめたら、今すぐにでも意識が飛びそうだ。
良い匂いが俺の鼻にかかる。
神崎さんは笑顔で俺に向いた。
なんで感謝されているんだろう。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!