あの日から翔太は俺と話さなくなった。でも今思えば俺も軽率だった。
翔太はあの日俺のことを赤の他人としか見ていなかった。なのにいきなり前世とか意味のわからない話をされればきっと俺とは距離を取りたいと思ったのだろう。
でも話しかけても無視される日々に苦しくなる。
俺も前世のことを覚えていなければ楽だったのかな。なんて思ってしまう。
双子として家族として過ごしてきた翔太が今も鮮明に思い出せるから今の翔太と重ねてより苦しくなる。
「翔太、」
結局俺はいつも翔太に話しかけてしまう。今日は言葉を返してくれるかな、前世のことを思い出してくれるのかななんて淡い期待を抱いてしまう。
「…お前さ」
今日久しぶりに俺に向かって翔太の口から発せられた一言にさらなる期待を抱いてしまう。
「いい加減気づけよ。俺、お前とは話したくない。顔も見たくもない」
それだけ言って翔太は別のところに行ってしまった。
ただただ翔太が俺のことを嫌っているという感覚が伝わってきて泣きそうになった。
あんなに優しくて、楽しくて、可愛くて、ちょっと頼りなかったけど家族として共にいると幸せで幸せで。
そんな翔太にもう会えることはないと思うと胸が苦しくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。