暑かった夏が終わって、
気づけば、
季節はすっかり変わっていた。
吐く息が、少し白くなる朝。
指先が冷たくて、
ポケットに手を突っ込む。
……冬、近いな。
韓国の秋冬は、容赦がない。
カイロ、必須。
そんなことを考えながら、
俺はふと、
ある人のことを思い出す。
……先輩、大丈夫かな。
最近、全然会えてない。
受験。
内部進学とはいえ、
試験がないわけじゃない。
むしろ、
しっかりした試験がある。
だから、
忙しいのはわかってる。
ジョンハン先輩には、
ちょくちょく会うのに、
肝心の先輩には、会えない。
……仕方ないけど、
少しだけ、寂しい。
放課後。
コンビニに立ち寄る。
迷わず手に取るのは、
冬用のカイロと、
いちごミルク。
先輩が好きなやつ。
レジで会計して、
そのまま寮へ向かう。
東棟。
先輩の部屋の前。
少しだけ立ち止まる。
……いない、よな…。
わかってるけど、
少しだけ期待してしまう
自分がいる。
ドアノブに、
カイロといちごミルクを
引っ掛ける。
jk「……体調、崩さないでください」
小さく呟く。
届くかどうかもわからないのに。
そのまま、
静かにその場を離れる。
自分の部屋に戻る。
ドアを開けると、
ルームメイトが振り向く。
「あ、ジョングク」
jk「ん?」
「テヒョンって人から、
これ預かったよ」
差し出されたのは、
見覚えのある紙袋。
……え。
一瞬でわかる。
Tiffeny & Ca.の袋。
jk「……なんで」
思わず声が漏れる。
ルームメイトが肩をすくめる。
「本当は直接
渡したかったらしいけど」
「時間なくてさ、
今日しか来れなかったんだって」
「お前いないって言ったら、
めっちゃ悲しがってた」
……先輩。
胸が、じん、とする。
袋を受け取る。
少しだけ震える手で、
中を開ける。
四角い箱。
丁寧に結ばれたリボン。
ゆっくり解く。
箱を開けると、
そこにあったのは、
シルバーのネックレス。
リングが、2つ。
ひとつにはブランドのロゴ。
もうひとつには、
小さく刻まれた、イニシャル。
……俺と、先輩の…。
一瞬、息が止まる。
そのまま、
袋の中をもう一度見る。
小さな手紙。
開く。
『100日記念日だよ。
ペアネックレスにしたんだ。
これからもよろしくジョングク。
テヒョンより。』
jk「……あ」
思い出す。
……今日、
先輩と付き合って100日。
全然、気づいてなかった。
忙しいだろうに、
それでも、
これを用意してくれてた。
会えなくても、
ちゃんと、繋いでくれてた。
jk「……っ」
胸がいっぱいになる。
嬉しくて、
少しだけ苦しくて。
すぐにネックレスを手に取る。
首にかける。
ひんやりした感触が、
肌に触れる。
…先輩と、おそろい。
それだけで、
少しだけ距離が縮まった気がする。
スマホを取り出す。
写真を撮る。
ネックレスがちゃんと写るように。
そして、メッセージを打つ。
jk〔ありがとうございます。
大切にします。〕
送信。
既読がつく。
それだけ。
返信は、来ない。
……忙しいよな。
わかってる。
それでも、
画面を少しだけ見つめてしまう。
でも、
不思議と、寂しさは少なかった。
首元に触れる。
小さなリング。
jk「……待ってます」
小さく呟く。
……いつでもいいから、
また会える日を、
ちゃんと、
信じて待てる気がした。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。