花火が終わって、
夜空が少しずつ
静かに戻っていく。
さっきまでの光が嘘みたいに、
ただ星だけが残る。
その余韻の中で、
俺は、ふと思い出す。
……昼のこと。
母さんのあの一言。
母『どっちがどっちに
婿入り予定なの〜?』
そして、
先輩の返事。
v『……できれば、
入ってほしい、と
思っています』
あのときの、
少しだけ真剣な顔。
軽く流せなかった理由が、
今ならわかる気がする。
隣を見る。
先輩は、何も言わずに
夜空を見ている。
少しだけ、緊張する。
でも、
聞きたい。
ちゃんと。
jk「……先輩」
v「ん?」
jk「昼の……その」
言葉が少し詰まる。
jk「婿入り予定、のこと」
先輩が、
少しだけこっちを見る。
jk「どうして、……
ああいうこと、
言ったんですか」
ちゃんと聞く。
逃げないで。
すると、
先輩は少しだけ目を逸らして、
v「…あれは、急だったよね」
小さく息を吐く。
v「ごめん」
jk「いや、別に……」
否定しようとした瞬間、
先輩が続ける。
v「けど」
その一言で、
空気が変わる。
v「言ったことは、本気だよ」
心臓が、
一瞬止まったみたいになる。
v「ジョングクのこと」
少しだけ間を置いて、
v「離すつもり、してないから」
静かな声。
でも、はっきりしてる。
逃げ場がないくらい、
まっすぐ。
jk「……っ」
何も言えない。
ただ、
見てるしかできない。
先輩は少しだけ
困ったように笑って、
v「……一応」
視線を外したまま、
v「……あれは、
プロポーズだった、ね」
さらっと言う。
……え。
理解が追いつかない。
一瞬遅れて、
一気に熱が上がる。
jk「……っ、は?!」
声が裏返る。
顔が、
たぶん一瞬で赤くなる。
首元まで、熱い。
jk「ぷ、プロポーズって……」
言葉がうまく出てこない。
先輩はそんな俺を見て、
少しだけ楽しそうに笑う。
v「なに、その反応」
jk「いや、だって……!」
落ち着けない。
心臓がうるさすぎる。
jk「普通、もっとこう……
雰囲気とかあるじゃないですか…!」
v「今も雰囲気あるだろ」
jk「さっきまで花火でしたけど?!」
思わず突っ込む。
先輩がくすっと笑う。
v「……でもさ」
少しだけ真面目な声に戻る。
v「冗談で言ったわけじゃない」
その一言で、
また、胸がぎゅっとなる。
v「お前と、
ちゃんと先のこと考えてる」
ゆっくり、
言葉を選ぶみたいに。
v「まだ高校生だし、
すぐどうこうって
話じゃないけど」
それでも、
v「……そのくらい、好きだよ」
静かに落とされる。
……ずるい。
本当に。
どうしてこんなこと、
平気で言えるんだろう。
何も返せなくて、
ただ俯く。
顔、絶対見せられない。
先輩が少しだけ
覗き込んでくる。
v「……で?」
jk「……なにがですか」
v「返事」
さらっと言う。
……は?
jk「今、いるんですかそれ?!」
思わず顔を上げる。
先輩は少し笑って、
v「さあ?」
って、わざとらしく言う。
jk「……っ」
悔しい。
でも、
少しだけ考えて、
小さく息を吐く。
それから、
先輩の手をぎゅっと握る。
jk「……俺は」
まだ顔は見れないまま、
jk「先輩のこと、好きなんで」
それだけ言う。
少し間があって、
先輩が小さく笑う。
v「……それ、答えになってる?」
jk「なってます」
即答。
すると、
頭をぽん、と軽く叩かれる。
v「……まあ、いっか」
優しい声。
そのまま、
また少し距離が近づく。
夜はまだ終わらない。
でも、
……たぶん、忘れない。
この瞬間は、
ずっと残る気がした。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!