慌てて救急箱を引きずり出して、帳場から降りる。
お兄さんを椅子に座らせて、ちょっと恥ずかしいけど怪我をちゃんと見るために上着を脱いでもらった。
筋肉質なお兄さんがここまで怪我するなんて、何事とか思ってたけど
想像通り人助けするために自分の身を顧みてなかった。
何だか嬉しそうにニヤニヤしてるお兄さん。
何か僕変なこと言った?
でも、怪我してても余裕そうでムカつくから、痣ができてる所をグリっと押してやる。
って顔を上げた瞬間に気づいた。
今、ものすごく距離が近い。
目の前にはお兄さんの顔があって、鋭い目が僕の目を射止めてる。
周りの音が、何も聞こえなくなって、お兄さんの呼吸と、僕の心臓の音だけが聞こえる。
何だか目を逸らせなくて、耳がじわじわと熱くなるのが分かる。
途端に手が動かなくなって、頭の中がパンクしそうなほどに混乱した。
恥ずかしさから、速く終わらせたかったけど、さっきの恐怖がまだ抜けきらなくて、手が震えて上手く手当てができない。
力の入らない手で何とか包帯を巻いて、救急箱を片付ける。
核心を突いてくるお兄さんに言われるがまま、お兄さんがいつも座る椅子に腰掛けた。
お兄さんが来てくれたとき、すごく安心した。
今も、僕の手が震えてても、何も言わずに手当てが終わるのを待っていてくれた。
やっぱり、お兄さんは優しい。
包帯でぐるぐる巻きの手からくっきーの入った包みを受け取り、帳場に上って木箱に入れる。
帳場から降りて振り返れば、椅子に座って壁にもたれ掛かったお兄さんが、ふっと笑った。
少し考えてから、はっきりと言葉にする。
その瞬間、時が止まった気がした。
戸が閉まって、帳場には僕1人だけ。
名前、呼ばれた…?
ジソンって、言ったよね?
うわ…耳熱い…何これ、胸が苦しい。
でも、殴られそうになったときとは、違う苦しい。
何これ、分かんない…。
取り敢えず、残ってる仕事を終わらせようとして帳場に戻る。
木箱の隣にぽんと置いてある綺麗に畳んだ羽織を見て
って叫んで、お客さんたちに今度は不思議そうな目で見られたのは
今日だけは忘れることにした。


こういうコメントが何気に1番モチベーションだったりする。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。