第4話

🚓🐾 失礼じゃないですか?
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2026/01/09 15:30 更新
人の多い観光地。

駅前は騒がしくて、少し息苦しい。

感染症が怖くて、マスクは外せなかった。

メイクも慣れてなくて、最低限だけ。

前を歩いていた若い男が、振り返る。

「え、あの人さ」

「マスクにすっぴん?ダサくねwww」

笑い声。

聞こえないふりをしようとして、

足だけが少し早くなる。

その時。

「――失礼じゃないですか」

低く、はっきりした声が割って入った。

振り向くと、そこにいたのは

栞葉るりだった。

落ち着いた表情のまま、男たちを見る。

「人が何つけようが、どう見えようが、
あんたらに評価される理由ないですよね?」

男たちが一瞬言葉に詰まる。

「それに」

視線が、こちらに一瞬だけ向く。

「感染症気にして対策してる人を笑う方が、
よっぽど恥ずかしいと思うけど?」

空気が冷える。

男たちは「だる……」とか言いながら、

そのまま去っていった。

「……大丈夫?」

静かに、近くで聞こえる声。

小さく頷くと、

栞葉はそれ以上何も言わなかった。

「旅行、楽しみだね〜」

「変なことで気分落とすの、もったいないよ!」

それだけ言って、

再び隣を歩く。

胸の奥が少しだけ、軽くなった。

次の日。

宿で、スマホを見ていた。

「初心者 メイク」「ナチュラル 旅行」

動画を何本も再生して、止めて、また見る。

マスクも、今日は外してみようか。

ちゃんと、やってみようか。

そんなことを考えていると――

「……それ、昨日のこと気にしてる?」

驚いて振り向く。

そこには、栞葉るり。

画面を一瞬見て、すぐ目を逸らす。

「無理しなくていいですよ」

責めるでもなく、否定でもなく。

「変えたいなら、いいと思います」

「でも、笑われたから変わるのだったら、
それはあなたのせいじゃない。」

一拍。

「そのままのあなたで、いいと思う」

はっきり、迷いなく。

「無理しなくていいし、
誰かに合わせる必要もない」

少しだけ、柔らかく笑って、

「旅行は楽しむものです」

「あなたが楽な格好で、楽に過ごせるのが一番です」

それだけ言って、

いつもの調子で部屋を出ていった。

スマホの画面は、そのまま。

でも、さっきより、

手の力が抜けていた。

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