今、よく聞こえなかった……、わけではない。
たしかに、萌ちゃんは今、言ったんだ。
私とのあが前通っていた、あの学校の名前を。
あそこはここら辺だと田舎な方だし、少し治安も悪い。
だからこそ、私は少し苛めに近いことをされたかもしれない。
とはいえ、同じ学年にいたら、気付くのではないか。
私が実際にその高校にいたのは、1学期だけだったけど。
でも、あの高校に通うならば、転校生でもない限り中学も一緒のはず。
一体、どういうことなのだろう。
私が驚きの声を発した後何も喋らないから、萌ちゃんは焦っていた。
いけない いけない。
相手を困らせてどうするの。
会話のキャッチボールは、ちゃんとしないと。
奏ちゃん、美香ちゃん、のあ の3人の後ろに、萌ちゃんと私が並んで歩いているって感じで、3人も何かの話題に盛りあがっている感じがした。
この会話がもし、のあに聞こえていたら、のあは驚いただろうか。
のあなら、ちゃんと萌ちゃんの顔を見れば思い出せるのだろうか。
わからない。
けれど、訊いてみた方が良いかもしれない。
まずは、萌ちゃん本人に訊いてみよう。
かなり驚いている。
演技のようにも見えないし、やっぱり萌ちゃんは私のことを知らないみたい。
何かを考えているように見える。
萌ちゃんは、のあのことを知っているのだろうか?
反応的に、知らなかった可能性が高い。
でも、もしかしたら見たことくらいはあるかも、って、記憶を辿ってる……んだと思う。
まぁ、私の個人的な考えだけど
いきなりのあが振り返って話しかけてきたから、すごく驚いている。
のあが、すっごくフレンドリーに萌ちゃんに話しかけている。
萌ちゃんも戸惑ってはいるものの、まんざらでもなさそうな雰囲気だ。
そして、そのまま他の人にもぺこぺこお礼を言って、萌ちゃんは温泉に行こうとした。
結局、質問に答えてもらう前にお別れだな。
まだ明日があるし、一生会えないとまではいかないと思うけど……
などと考えていたら、萌ちゃんが私にだけ聞こえるくらいの声で話しかけてきた。
ん?今、「後で会えますか」って言った?
これってもしかしてこくはk(((……
うん、それはないな。
数秒間黙り込んだ後、萌ちゃんはそう言った。
「2人きりで話したい」、?
え、ほんとにこくはk(((
というよくわからない会話をして、私たちは別れた。
2人きりで話したい、か…… 。
なんだろう

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。