第5話

第5章「風邪の日」
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2026/08/29 08:09 更新


同居生活。

二週間目。

朝。

いつもなら。

先に起きるのは柔太朗だった。

でも。

その日は違った。

午前6時40分。

柔太朗は目を覚ました。

🤍「……」

隣を見る。

勇斗が。

まだ寝ている。

昨日も遅くまで仕事をしていた。

🤍「……佐野?」

返事がない。

柔太朗は。

ベッドから起き上がった。

🤍「佐野、起きて」

🩷「……ん」

🤍「朝」

🩷「……分かった」

いつもの返事。

でも。

声が違った。

少し。

弱い。

🤍「……大丈夫?」

🩷「大丈夫」

🤍「ほんと?」

🩷「うん」

柔太朗は。

少し気になった。

でも。

それ以上は聞かなかった。

ーーー

朝食。

いつものように。

二人でテーブルにつく。

柔太朗はパンを食べる。

勇斗は。

コーヒーだけ。

🤍「佐野」

🩷「ん?」

🤍「食べないの?」

🩷「あんまり食欲ない」

🤍「珍しいね」

🩷「昨日食べすぎたかな」

🤍「昨日、そんな食べてないじゃん」

🩷「そうだっけ」

柔太朗は。

勇斗の顔を見る。

少し。

赤い気がする。

🤍「……佐野」

🩷「何?」

🤍「熱ない?」

🩷「ないよ」

🤍「測った?」

🩷「測ってない」

🤍「じゃあ測って」

🩷「大丈夫だって」

🤍「いいから」

🩷「……山中、朝から細かい」

🤍「いいから」

勇斗は。

少し面倒そうに体温計を受け取った。

しばらくして。

電子音。

柔太朗が画面を見る。

🤍「……」

🩷「何度?」

🤍「38\.1」

🩷「……」

勇斗が。

固まる。

🩷「え」

🤍「だから言ったじゃん」

🩷「でも仕事……」

🤍「休む」

🩷「いや、今日は大事な打ち合わせが」

🤍「俺が連絡する」

🩷「山中」

🤍「休んで」

少し。

強い声だった。

勇斗は。

黙った。

そして。

小さく息を吐く。

🩷「……分かった」

ーーー

会社。

柔太朗は。

上司に連絡を入れた。

「佐野さん、体調悪いんですか?」

🤍「はい。熱があるので、今日は休ませます」

「分かりました。こちらで対応します」

🤍「ありがとうございます」

電話を切る。

柔太朗は。

寝室を見る。

勇斗は。

布団に入っていた。

🤍「佐野」

🩷「ん?」

🤍「今日休み」

🩷「……うん」

🤍「薬とか必要なもの、買ってくる」

🩷「いいよ。自分で行く」

🤍「熱ある人が?」

🩷「……」

🤍「寝てて」

🩷「……分かった」

柔太朗は。

少しだけ笑った。

🤍「珍しい」

🩷「何が?」

🤍「佐野が素直」

🩷「うるさい」

🤍「はいはい」

ーーー

昼。

柔太朗が。

買い物から戻ってくる。

飲み物。

食べやすそうなもの。

必要なものを。

いくつか買ってきた。

玄関を開ける。

🤍「ただいま」

返事がない。

🤍「佐野?」

寝室を見る。

勇斗は。

眠っていた。

柔太朗は。

静かにドアを閉めた。

ーーー

夕方。

勇斗が目を覚ます。

🩷「……」

少し。

身体が重い。

部屋を出る。

すると。

テーブルの上に。

食事が置いてあった。

🩷「……これ」

キッチンを見る。

柔太朗が。

夕食を作っていた。

🤍「起きた?」

🩷「うん」

🤍「まだ熱ある?」

🩷「分かんない」

🤍「測って」

🩷「また?」

🤍「また」

勇斗が。

体温を測る。

🤍「どう?」

🩷「37\.6」

🤍「少し下がったね」

🩷「うん」

🤍「じゃあ、これ食べて」

🩷「作ったの?」

🤍「雑炊」

🩷「……ありがとう」

🤍「別に」

勇斗は。

椅子に座る。

一口食べる。

🩷「……おいしい」

🤍「ほんと?」

🩷「うん」

🤍「よかった」

ーーー

食べ終わる。

勇斗が。

食器を片付けようと立ち上がる。

🤍「何してるの?」

🩷「片付け」

🤍「座ってて」

🩷「でも」

🤍「今日は病人」

🩷「……分かった」

柔太朗が。

食器を持っていく。

勇斗は。

その背中を見る。

昨日まで。

「細かい」

と思っていた。

でも。

今日は。

少しだけ。

ありがたいと思った。

ーーー

夜。

勇斗は。

ソファに座っていた。

柔太朗が。

テレビをつける。

🤍「何見る?」

🩷「何でもいい」

🤍「またそれ」

🩷「今日は本当に何でもいい」

🤍「じゃあこれ」

テレビから。

適当な番組が流れる。

しばらく。

二人とも。

黙って見る。

すると。

勇斗が。

ぽつりと言った。

🩷「……山中」

🤍「ん?」

🩷「今日、ありがとう」

🤍「何が?」

🩷「休むように言ってくれたこととか」

🤍「普通でしょ」

🩷「でも」

少し間。

🩷「俺、仕事休むの苦手だから」

🤍「知ってる」

🩷「……知ってるんだ」

🤍「同じ会社だし」

🩷「そっか」

柔太朗は。

テレビを見ながら言った。

🤍「無理して仕事行っても、結局周りが大変になるじゃん」

🩷「……うん」

🤍「だから、休むときは休めばいいよ」

勇斗は。

黙っていた。

そして。

🩷「……山中って」

🤍「ん?」

🩷「思ってたより優しいね」

柔太朗が。

少し驚く。

🤍「何それ」

🩷「そのまま」

🤍「俺、前から普通に優しいけど」

🩷「それはない」

🤍「ひど(笑)」

二人で。

少し笑った。

ーーー

夜11時。

勇斗は。

寝室へ向かう。

🤍「佐野」

🩷「ん?」

🤍「明日も熱あったら休んでね」

🩷「分かってる」

🤍「ほんと?」

🩷「ほんと」

🤍「じゃあいい」

勇斗は。

ベッドに入る。

電気を消す。

しばらくして。

🩷「……山中」

🤍「ん?」

🩷「今日、助かった」

🤍「うん」

🩷「おやすみ」

🤍「おやすみ、勇斗」

暗闇の中。

勇斗は。

少しだけ笑った。

最初は。

同じ部屋にいるだけで嫌だった。

生活も。

性格も。

考え方も。

何もかも合わないと思っていた。

でも。

二週間一緒に暮らして。

少しずつ。

分かってきた。

相手には。

自分が知らない一面がある。

そして。

それを知るたびに。

「嫌い」という気持ちが。

ほんの少しずつ。

形を変え始めていた。

まだ。

好きではない。

でも。

もし。

この同居生活が終わったら。

――少し寂しいかもしれない。

勇斗は。

そんなことを考えながら。

眠りについた。

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