第2話

1 “過去”の称号
23
2026/02/14 12:09 更新

朝起きて、制服を着て、食堂でご飯を食べる。


髪が短いから、セットに時間がかからなくて楽。


最近伸びてきたなぁ。どっかで切ろうかな。


なんて思いながら身支度を済ませると、私は学校へ向かう。


昇降口で靴を履いていると、



廊下のテレビでニュースが流れていた。

ニュースキャスター①
『今日の特集は、今最も注目されている
若手俳優の目黒蓮さんです!』
あなた
…………
ニュースキャスター②
『かつて天才子役と呼ばれていた
蒼野あおのあなたの下の名前さんもその実力を認めていて、
今最も勢いのある俳優として
注目を集めています』
あなた
………………………はぁ

まったく、これだからテレビは嫌い。


この人について何か言った覚えはない。視聴率稼ぎか?


というか、私はもう、あの頃みたいには………………………

渡辺翔太
おはよ
あなた
あ、うん。おはよ

後ろからクラスメイトの翔太に声を掛けられる。


彼もまた、テレビのニュースを見ていたようで。

渡辺翔太
……………………俺らも、もっと頑張らねぇと
あなた
………………………そう、だね

ホント、あんたは私と大違いだね。


画面に釘づけの渡辺を横目に、教室へ向かった。


教卓のちょうど前にあるのが、私の座席。


運がいいのか悪いのか、



この前の席替えでそこの席を引いてしまった。


今の席は大嫌い。



担任の声がうるさいし、毎授業当てられる。


_____今日もまた、何もない一日が始まるのだ。

モブキャラ①
ホント面白くて……………………あ、
蒼野さんおはよー
あなた
……………………おはよー
モブキャラ②
おはよー

友達はいない。顔を合わせれば挨拶をする程度でしかない。


それに。

モブキャラ②
………………よく話しかけれるよね
モブキャラ①
まぁ……………かわいそうだし………………
私だったら絶対嫌かも
モブキャラ②
でも売れなかったんだから。仕方ないよねー
モブキャラ①
”元”天才子役って呼ばれちゃうのも、
なんか納得っていうか……………

コソコソ話してるつもりなんだろうけど、全部丸聞こえだ。


所詮、子役なんてその程度の仕事。


売れれば大ブレイクの勝ち組。



売れなければブーイングの負け組。


あくまでも、主役を目立たせるための【アイテム】。


そんな子役として活動していた過去を、



今でも引きずられるのは重い。


たしかに私は売れなかった。成長するにつれ仕事も減った。


見放されて、学校でも街中でも指をさされて笑われた。


今でも本気で役者を目指しているなんて、



言えた義理じゃない。


……………でも、仕方ないんだ。


時に華やかで、時に残酷。それが運命というものなのだ。


周囲のにぎやかさとは反対に、静けさで満ちている私の席。


最後の鐘が鳴るまで、



私は木目を見つめることしかできない。

渡辺翔太
行くぞ
あなた
…………………
渡辺翔太
おい
あなた
…………………

話しかけられている。それはわかってる。


でも、私が行く場所には行きたくない。


机に夕日が差し込む。



別の誰かを照らすスポットライトみたいに。


私を素通りして、壁に向かう。

渡辺翔太
………………今できること、わかってんだろ
あなた
………………っわかってる!!

ダン、と、乾いた怒りが音を立てた。


叩きつけた右手がじんわりと痛い。

あなた
わかってるよ!居場所なんてない私に、
選んでいい権利なんてない……………!!
渡辺翔太
…………………

私はもう、名もなき演者でしかないんだから。


カバンを引っ掴むと、私は教室を出た。

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