朝起きて、制服を着て、食堂でご飯を食べる。
髪が短いから、セットに時間がかからなくて楽。
最近伸びてきたなぁ。どっかで切ろうかな。
なんて思いながら身支度を済ませると、私は学校へ向かう。
昇降口で靴を履いていると、
廊下のテレビでニュースが流れていた。
まったく、これだからテレビは嫌い。
この人について何か言った覚えはない。視聴率稼ぎか?
というか、私はもう、あの頃みたいには………………………
後ろからクラスメイトの翔太に声を掛けられる。
彼もまた、テレビのニュースを見ていたようで。
ホント、あんたは私と大違いだね。
画面に釘づけの渡辺を横目に、教室へ向かった。
教卓のちょうど前にあるのが、私の座席。
運がいいのか悪いのか、
この前の席替えでそこの席を引いてしまった。
今の席は大嫌い。
担任の声がうるさいし、毎授業当てられる。
_____今日もまた、何もない一日が始まるのだ。
友達はいない。顔を合わせれば挨拶をする程度でしかない。
それに。
コソコソ話してるつもりなんだろうけど、全部丸聞こえだ。
所詮、子役なんてその程度の仕事。
売れれば大ブレイクの勝ち組。
売れなければブーイングの負け組。
あくまでも、主役を目立たせるための【アイテム】。
そんな子役として活動していた過去を、
今でも引きずられるのは重い。
たしかに私は売れなかった。成長するにつれ仕事も減った。
見放されて、学校でも街中でも指をさされて笑われた。
今でも本気で役者を目指しているなんて、
言えた義理じゃない。
……………でも、仕方ないんだ。
時に華やかで、時に残酷。それが運命というものなのだ。
周囲のにぎやかさとは反対に、静けさで満ちている私の席。
最後の鐘が鳴るまで、
私は木目を見つめることしかできない。
話しかけられている。それはわかってる。
でも、私が行く場所には行きたくない。
机に夕日が差し込む。
別の誰かを照らすスポットライトみたいに。
私を素通りして、壁に向かう。
ダン、と、乾いた怒りが音を立てた。
叩きつけた右手がじんわりと痛い。
私はもう、名もなき演者でしかないんだから。
カバンを引っ掴むと、私は教室を出た。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!