第43話

その42 誕生日
1,213
2026/03/10 09:41 更新
【ジェシー】


「ジェシー!いつまでスマホ見てんの!行くよ!」

事務所のソファにうつ伏せでだらりと寝そべってたら
マネージャーに背中を引っ叩かれた。

「さすが、眉間にシワを寄せた顔もカッコいいわね」
「……」

長い付き合いのマネージャーに勝てるわけもなく…
スマホをカバンに放り込んでのろのろと立ち上がった。

「まだ不貞腐れてんの?」
「不貞腐れてない、どうにかなんないか考えてる…」
「どうにもなんないってば、諦めなさい」
「イヤぁだ!」

建物の前に横付けされているワンボックスに押し込まれ
て、俺の抵抗はむなしくも、ゆっくりと閉まるドアに
優しくシャットアウトされた。


先週から始まったこの攻防。

今週末、休みを入れる予定が仕事の打ち合わせが入って
完全に吹っ飛んだ。

どうしても休みたい俺は、何とか調整できないかずっと
食い下がっていた。

「どうしたのよ?いつもはそんなこと言わないじゃない」
「……」

だって…

「珍しい我儘だから本当はきいてあげたいけど…」

今回は案件が案件だし、小島のスケジュールもあるから…
ごめんねって、運転席で申し訳なさそうなマネージャー。

「…わかってる」
「週末、なんかあったんでしょう?」
「……恋人のバースディ」
「そっか…」

再会して恋人としての
初めてのこーちの誕生日
だから一緒に過ごしたかったんだけど…

ごめんねって、もう一度マネージャーに言われて

「いいよ、こっちこそゴメン…」

さすがに我儘すぎたと反省しながら窓の外を眺めた。



「…だから、その日は会えなくなって…」

夜、家に帰って
こーちにごめんねって電話した。

『そんな、いいよ!仕事、大事じゃん!』

スマホ画面には大慌てしてるこーち

『つか、そんなスケジュール空けようとしてくれて、
 …ありがとう』
「結局、ダメだったけど…」
『いいんだってば笑』
「あ、でも!こーち、来週金曜の夜は家にいる?」
『いる、けど?』
「ちょっとだけ行ってもいい?遅くなるかもだけど…」
『え…っ?』

え?

急にこーちの顔が引き攣った。

『あー…、っとぉー…』

視線を彷徨わせて
戸惑うどころか、…明らかに困ってる。

あ、れ…?
いきなり家に行きたい、はダメだった?
調子に乗り過ぎちゃった?

「あ…、ゴメン!無理には…」

慌てて謝ったら
それに慌てたこーちに思わぬ提案をされた。

『いや!あ、の、俺がジェシーんちに行ってもい?』
「He!?いいけど…?」
『終わる頃に連絡くれたら、そっちに行くから…』

…そのほうが、いっぱい会えるかも…

上目づかいで、もごもごと呟いた一言にヤラれた。

ちょっと待ってよ
それはズルいだろ…

耳を真っ赤にして俯いてしまったこーちが可愛くて
顔がニヤけるのが止められない。

そんなこと言われちゃったら
俺もう頑張っちゃうからね!

「それならこーち、泊まって行ってよ!」
『へ…、え!?』
「次の日、午前中はあいてるから」

俺の家でお祝いしようね。





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