第34話

間に合うことを信じて
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2020/04/01 00:21
田中莉子
ひ、裕翔くん……行っちゃうよ!?

周りの女子を見ると、不思議そうな顔をしていた。




あ……と気づいて辺りを見回してもひろはいない。



あぁ……




もう行ったんだ。



バカだな、私。


田中莉子
ちょっと来て!


私は莉子に引っ張られるまま、校門の近くまで来てしまった。



田中莉子
由希、昨日話した?


話してない。


でも……もう無理だよ。


田中莉子
話してないの?


私が答えられずにいると、莉子は大きなため息を漏らした。


田中莉子
何やってんの!?

え……?



莉子は確かにいつも声が大きいけど……ここまで大きな声を聞いたのは初めて。


周りにいた子たちは何事かと思っているみたい。

田中莉子
ねぇ!!

莉子は私の肩を両手で掴み、揺さぶる。


田中莉子
目を覚まして!!このままでいいの!?後悔しない!?もうしばらく会えないんだよ!?


そう言う莉子の目には少し涙があった。



こんなに……私のことを考えてくれてる。

あぁ、私どれだけ間違ってたんだろ。


立花美咲
由希ちゃん、行って。
天野由希
え……


行ってって言われても……




もう出発してるでしょ?


立花美咲
今すぐ行って!!
天野由希
でも、もうひろは……
立花美咲
一時間余裕を持って行ったの!だから、まだ間に合う!!


えっ……?


一時間余裕を持って行った?



てことは、まだ出発してないの?




立花美咲
由希ちゃん、ひろくんは、由希ちゃんを選んだんだよ?ひろくんは由希ちゃんのことが好きなの!!


周りはざわざわと騒ぎ始めていた。





でも……







今の私にはそんなこと関係ない。


周りにどう思われるかなんてどうでもいい。



天野由希
美咲……莉子……
田中莉子
行ってきな。
立花美咲
ひろくんはきっと由希ちゃんのことを待ってる。


ひろは私のことを待ってる……?




気づいた時にはもう走り始めていた。

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