周りの女子を見ると、不思議そうな顔をしていた。
あ……と気づいて辺りを見回してもひろはいない。
あぁ……
もう行ったんだ。
バカだな、私。
私は莉子に引っ張られるまま、校門の近くまで来てしまった。
話してない。
でも……もう無理だよ。
私が答えられずにいると、莉子は大きなため息を漏らした。
え……?
莉子は確かにいつも声が大きいけど……ここまで大きな声を聞いたのは初めて。
周りにいた子たちは何事かと思っているみたい。
莉子は私の肩を両手で掴み、揺さぶる。
そう言う莉子の目には少し涙があった。
こんなに……私のことを考えてくれてる。
あぁ、私どれだけ間違ってたんだろ。
行ってって言われても……
もう出発してるでしょ?
えっ……?
一時間余裕を持って行った?
てことは、まだ出発してないの?
周りはざわざわと騒ぎ始めていた。
でも……
今の私にはそんなこと関係ない。
周りにどう思われるかなんてどうでもいい。
ひろは私のことを待ってる……?
気づいた時にはもう走り始めていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!