第29話

本当のことを話す
285
2020/04/02 09:49
天野由希
私は最初、ひろのことなんてどうも思ってなかった。でも、あのボウリングの日、美咲とひろが仲良くしてたのを見て、嫌になった。モヤモヤしてた。それで気づいたの。あぁ、私、ひろのこと好きなんだなって。

あのときのこと


今でも鮮明に覚えてる。

天野由希
それから、ひろに気持ち伝えたの。今まで誰にも言ってなかったのは、騒がれるのが嫌だったから。相手はあのひろだし、噂になるに決まってる。だから、誰にも言ってなかった。私がひろに言わないでってお願いしたの。


それからしばらくの沈黙が続いた。

立花美咲
そっか……
天野由希
本当にごめん。
立花美咲
もういいよ。由希ちゃんのことは信じれると思うから。





少しでも、まだ美咲が私のことを信じようとしてくれてる。




なら、私は美咲のために出来ることをしたい。


立花美咲
由希ちゃん、もう隠し事はなしだよ?
天野由希
…うん。


そう言うと、美咲はいつもの笑顔を取り戻した。


私はもうこの笑顔を消えさせないようにしよう、そう思う。

立花美咲
ねぇ、由希ちゃん、懐かしいね。
天野由希
そうだね。


中庭の、このベンチから見るこの景色。



あのときと変わっていない。


立花美咲
あ!昼休み終わっちゃう!
天野由希
早く教室戻んないとね。
立花美咲
うん!


そうして私は美咲と長い教室までの通路を走って走って行く。





楽しいな。


そう思う度に友達の大切さを実感する。








教室につくと、莉子が慌てていた。


田中莉子
ね、ねぇっ!
天野由希
何?
田中莉子
ど、ど、どうだった……?


あ、告白のことか。

立花美咲
振られちゃった。


美咲は笑ってそう告げた。


けど……このままでいいの?

莉子にも隠し続けたままで?



よくない。





元田裕翔
由希。もう、よくね?


後ろからナイスタイミング!でひろが来た。



天野由希
うん。


でも、莉子や春也、片山はこの状況が分かっていない様子。


そりゃあ、そうだよね。



私たちは人目を避けるために、教室を出て階段の方に来た。
天野由希
みんなには黙ってたんだけど……
元田裕翔
俺たち……付き合ってる。


3人とも固まってる。

静止画みたいに。


天野由希
ごめん、黙ってて。

静まり返ったこの状況で、莉子が口を開いた。

田中莉子
ねぇ、いつから?
天野由希
ボウリングよりもあと。
田中莉子
そう……なんだ。


その私の返答を聞くと、莉子は少しほっとしたような表情を見せた。


どこにほっとする要素があったのか。

田中莉子
もしかしたら、あのゲームがやっぱり何か問題だったんじゃないかと思って……
天野由希
逆にあのゲームがあったから、自分の気持ちが分かったんだよ?


本当に、あのゲームがなかったらどうなってたんだろう。

自分の気持ちにすら、気づけてなかったのかな?

ひろは美咲と付き合ってたのかな。

田中莉子
なんかもうよく分かんないけど……2人が幸せならそれでいい!!

莉子……!!



私は友達に恵まれてる。

いい友達を持ったな。



また、そう改めて実感するのであった。

プリ小説オーディオドラマ