脈が弱まりつつある炎柱、煉獄杏寿郎を一目見るなり翠院あなたは彼に走り寄った。
吐血した口を開いて、煉獄が優しげに言葉を発した。
煉獄が目を向けると同時に、周りにいた隠や隊士たちが他の場所に移っていく。
周りに人がいなくなった瞬間、あなたの表情が変わった。
それに気づいた煉獄が、不審そうに彼女の目を見つめる。
先程までの表情とは段違いの冷たい表情で手をかざすと、水が煉獄を包み、開いていた彼の瞳がゆっくりと閉じた。
【血鬼術・翠乱毒牙】、この血鬼術を浴びて生き残った者はいなかった。
力なく座り込む炎柱を見て、あなたは笑みを漏らした。
幸い周りに人影はなく、彼女の姿を見た者はいない。
口調とは別に、彼女は笑っていた。
開いた口から、とがった牙がチラリと覗く。
彼女の言葉通り、林の陰からひとりの隊士が現れた。
特徴的な赤い瞳をきょろきょろと動かしながら、その隊士が呟く。
どうやら鬼がここにいたことに気づいているようだ、とあなたは少しその隊士を見つめた。
隠が冷たく言い放ち、煉獄の遺体を運び始めた。
涙をふくふりをして鬼の目を人間の目に戻すと、あなたは脱線した汽車をチラリとみてから館への道を歩き始めた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!