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第6話

@ 恋してますか?
6
2024/03/24 10:58
未来side
午前授業が終わってお昼休みになった頃。
私と花湖は急いで中庭に向かっていた。私と花湖はお弁当派なので、他の子達に中庭のお気に入りベンチが取られないよう、いつも大急ぎ。
いつメン男子2人は購買派なので購買にダッシュして大人気の揚げパンを争奪戦で勝ち取っている頃だろう。
未来
未来
よっし、取れたーー!!
花湖
花湖
よかった、危ない危ない。
息を少し切らしながら、同じお弁当派であろうライバル(普通の生徒)の誰より先にお気に入りのベンチを勝ち取った私たち。
このベンチは4人掛けになっていて、ベンチとテーブルが付いているお弁当も購買で買ってきたものも食べやすいベンチとなっている。よく公園の屋根の下にあるようなやつが中庭にあるような感じ。
ここは入学してからのお気に入りの場所で、今のいつメンになる前でも私は他の友達と使っていた。その友達には悪いけど、今でもここは私たちの特等席。
未来
未来
早くたーべよっ!
私は花湖より先にベンチに腰を下ろすと、手に持っていたお弁当をテーブルに置いた。少し走って息を切らしてきたせいか、お弁当はぐちゃぐちゃになってしまっていると思うけど、別に食べられたらなんでもいい。
食いしん坊だねって友達によく言われるけど私は食いしん坊なんじゃない。ただお腹が減りやすいだけだ!!
花湖
花湖
せっかちさんだね。
くすくす、と笑いながら花湖も私の隣に腰を下ろした。向かいに座ればいいのに、なんてこともたまに考えるけど、友達の隣にいると気持ちがいいように、花湖もいい気分になったりするのかな。
未来
未来
せっかちじゃないしー?
花湖
花湖
はいはい、食べないの?
ふふ、と花湖は少し笑って「いただきます。」と手を合わせた。私も花湖にならって「いただきまーす!」の手を合わせたら、お弁当の蓋を開いて隣に置いた。
花湖とお昼を食べ始めて少し経った頃。私たちはいろんな話をしながら昼食を食べすすめていた。話も段々盛り上がり始め、いつものように「あの話題」を振った。
未来
未来
花湖は好きな人とは順調?
にひひ、と少し笑って花湖の方を見ては私はお弁当を食べる。お母さんが朝から手作りしてくれている卵焼きとハンバーグは小さい頃からの絶品。
花湖
花湖
いや、まあまあかな。
花湖はいつものように見えるけど、本当は少し照れている。足元を見れば少しもじもじしているし、顔もよく見ればほんの少し赤くなっている。花湖はクールでばちばちのダンス部に見えるけど、普通に乙女なのだ。
花湖の好きな人は花湖とは違って明るくて元気な人なのだけれど、花湖は珍しくそんな人に惹かれたらしい。どうやら昔からおとなしい人が好きだったらしいけど、最近好みが変わったんだって。まあ、好みが変わったのは今の好きな人の影響なんだろうけど。
未来
未来
もー!照れちゃって!
箸を持っていない方の手でつんつん、と花湖の頬をつついた。花湖はさらに照れちゃってお弁当を食べる手を止めて思わず俯いてしまっている。今日はすごくてれている。いつもならこんなに食事が止まってしまうほど照れることがないのに。
さては!?私の先を越してなにか新しい進展があったのではないか!?越すもなにも、私には好きな人が居ない。高校に上がってから一度もできたことがないし、ときめいたこともない。告白はなんどか受けたことはあるけど・・・って、いけないいけない。今は花湖の話なんだった。
花湖
花湖
もういいからっ。
照れていた花湖は少しそっけなくさっきよりも冷たい口調で言ったけど、その表情は少しにこやかでなんだか見ているだけでホッとするような笑顔を浮かべていた。花湖自身、これ以上聞かれるのは嫌なのだろうけど、いいことがあったみたい。
未来
未来
も〜、かわいいんだから!!
花湖
花湖
揶揄わないでよ
思わず口に出した「かわいい」。私は同じ女の子にかわいいってつい言いたくなっちゃう。花湖はすっかり通常運転に戻って、にこやかな笑みをこちらに向けて楽しそうにしている。
目を合わせてお互いふふっ、と少し笑えば、私たちは他の話題を引っ張り出しながらお昼を食べ出した。そのとき。
蒼大
蒼大
ごめんねー!購買いつもより混んでてさ!
優
揚げパンは死守したんだけどな。
今日値引きされる日だったから混んでたっぽい。
やっときた。いつメンの男子2人。いつもより遅い感覚は特になかったけれど、いつもより勾配が混んでしまっていたらしい。購買に無縁の私たちにとっては混んでるも何も、毎日大変そうだなあと思うだけ。
未来
未来
今日も揚げパン取ったのー?凄いじゃん!
花湖
花湖
揚げパンの神様かな。
大人気の揚げパンの争奪戦をすると言っても、こいつら2人はいつも勝ち取ってくる。県大会なみの強さを持った蒼大と性格がとにかく強気な優にとっては楽勝な戦争だったりしそう。
蒼大
蒼大
あー!僕すっかりお腹ペコペコー。
そう言って蒼大と優は私たちの向かいのベンチに腰をかけ、揚げパンとその他諸々の食べ物をテーブルにおいた。
揚げパンはいつも通り大きくて、砂糖もしっかりかかっている。他の食べ物のパッケージには値引きシールが貼ってあって、スーパーっぽく思えてくる。
花湖
花湖
早く食べなよ。お腹空いたんでしょ?
もう少してお弁当を食べ終わってしまいそうな花湖が蒼大にそう声をかける。そう。花湖が好きな人は今丁度花湖の向かいに腰をかけている蒼大。入学した時からの一目惚れで、水泳部っていうことがポイント高いみたい。
私に向けるよりほんのちょっと柔らかい笑みを蒼大にむけている花湖は嬉しそうだ。蒼大はなんやかんやで鈍感男だからその思いに気付きそうもないけど。
蒼大
蒼大
そーだねー!いっただっきます。
手をしっかり合わせて蒼大は揚げパンを早速口に放り込む。その横で頂きますも何も言わずに揚げパンを半分以上黙々と食べ切っているのが優。
いつもいただきますを言わないから本当に呆れちゃう。食べ物の神様とか信じてないのかな。信じていたとしてもバチが当たんねえ、とか思って舐めてそう。
未来
未来
またいただきます言わないで食べてんの?
お弁当を食べる手を止めはしないけれど、いつもこのように優に話しかける。大体反論してくるんだけどね。
優
うっぜー。ママみてえ。
未来
未来
うわ、お母さんじゃなくてママって言ったー!!
蒼大
蒼大
未来ったら、優に殺されちゃうよ!?
花湖
花湖
いつもこんなんじゃん?見慣れちゃった。
優はカッコつけているくせに結構中身が幼稚だからいじりポイントがたくさんある。その面ではおもしろいし、大事なところでは優しくしてくれてるし。だから優といると楽だし楽しいし友達として好き。
こんなやりとりを長く続けている間に、みんなのお昼ご飯が段々とテーブルの上からなくなっていって、ゴミや空の弁当箱が目立ち始めた。
私と花湖がお弁当を食べ終わって後片付けをし始めると、丁度昼休み終わりを告げるチャイムが鳴った。いつもよりくるのが遅かった2人は慌てて残っていた食べ物を口に放り込んでゴミをポケットに捩じ込んだ。
未来
未来
早くしないと遅れちゃーう!
花湖
花湖
おっさきー。
私と花湖は後片付けを終わらせてはベンチから一足先に腰を離した。
蒼大
蒼大
早いってー!まってー!
優
蒼大早くしろよ。
足の案外早い2人は急いだ私と花湖にすぐ追いついて、結局一緒に教室に戻ることになった。花湖と蒼大はニコニコ2人で話していて、その様子を見て私は嬉しかった。
花湖、早く付き合わないかなあって強く思う昼休みだったかもしれない。
私も早く恋がやってこないかな。蒼大と花湖を見てはそう思った。
優side
昼休みが終わっていつメン4人で教室に戻る頃。花湖と蒼大が仲良く話していた。この2人はどこからどう見ても両思いにしか見えない。
羨ましいなあって思う。
優
(何で気づいてくれないんだろ。)
俺の好きな人はすぐ隣にいるのに、なかなか恋の進展がない。というか、この人は恋がどーのこーのとか理解ができない人だと思う。
切ないのも青春かなあ、なんて。
俺は自分の気持ちを誤魔化すしかない。

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