紫色のポータルをくぐり抜けた先は、一面の闇だった。
闇の講師(こういうとなんかヤバいやつみたい)が明かりを灯しながらいるまを奥の方まで案内する。
すると、カサッといるまの足に何かが触れた。
下を見ると、ここらの地面一面に黒百合が咲き乱れている。
なんとなく物騒な雰囲気を醸し出しているこの場所で鍛錬するのはやや抵抗があったが、いるまは特に何も言わない。
闇の講師も無口なほうなのか、喋らない。
つまり自然に、沈黙が生まれる。
こんな暗いところで沈黙するのはかなりキツいとは思っているが、そもそも何の話題をふっかければ良いのかわからないいるまは、闇の講師の明かりだけを頼りに歩く。
もちろん、黙って。
少し歩き進めると、闇の講師がいるまを振り返ってその明かりを消した。
突然暗くなり、文字通り一寸先は闇状態になったいるまは、驚いて声を上げる。
だが、闇の講師は答えない。
まさか置いていかれたのではないかと不安になったいるまは、どうにか明かりを灯せないかと悩む。
ふと、自分の持ち魔法で深淵侵食というものがあったなと思い出す。
深淵というものを闇だと考えて、それを侵食、、、つまり吸収すればなんとかなるのではと閃いた。
いるまはなんとなく手のひらを上にして宙に翻し、深淵侵食と何となく心の中で唱えてみる。
すると、面白いくらいしゅるしゅると周りの闇が解けて、いるまの手のひらの上で球体にまとまった。
辺りは明るくなり、黒百合がよく目立つ。
少し離れたところに、闇の講師が驚いたように目を丸くしているまを見つめていた。
いるまは手のひらにのった拳ひとつくらいのサイズのどす黒い球体を持ったまま、闇の講師に視線をやる。
ポカンとしていた闇の講師は話を振られてそう答え、いるまはそれを聞いて球体を握り潰す。
なんとなく硬そうな雰囲気はあったが、実際はそんなことはなくてそのままフワッと霧散した。
触った時の感触がないのがキモイと思った。
講師の仕事を奪っちまった、と慌てるいるまに、闇の講師はまたもやポカリと口を開ける。
実は、あのシクフォニの6人を王城まで案内した伯爵も闇属性である。
よって闇の講師は、いるまが伯爵に少なからず何かを叩き込まれているのかと考えていたからだ。
そうじゃなければ、あんなに完璧に魔力と術の大きさのコントロールなんて、普通はできない。
勇者でさえも、訓練しなければ力を暴走させてしまう。
訓練した時の成長がえぐいだけで、それ以外は普通のこのシンフォニア王国の住民と変わりないのだから。
、、、ということを闇の講師が怒涛のオタク喋りでいるまに伝えると、いるまは少し考え込む。
実際、みことも轟王熊を倒す時に軽く魔法のようなものを使えていたし、シクフォニは天才かもしれない。
ただ、ハッキリと魔法を、しかも何の訓練もなしに使えたのは、いるまが初めてだ。
つまり、、、
いるまの厨二病がシンフォニア王国に来てから初めて目覚めた瞬間だった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。