ガヤガヤ……
(とりあえず言われるがままに王都に降りてきたが…)
(一体何をすれば…?)
トントンッ、と誰かに肩を叩かれた。
(え?)
思わず振り返ると、
«ねぇ、君。もしかして、今困ってる?»
と話しかけられた。
「だ、誰?」
«私は華畑絵名。えな、って呼んで!»
「もしかして、、人間、?」
«そう!私はあなたと同じように日本から転生してきた人間!»
«ちなみに日本にいたときの私の職業は探偵★»
「探偵!?だから俺が人間だってことわかったのか…」
«うん★»
«そういえば、!君の名前、教えてくれる?»
「あぁ、確かにまだだったな。」
「俺の名前は酒倉いと。いと、とでも呼んでくれ。」
«おっけー、いと。»
«じゃあ、いとに問題です。これからすることといえば〜?»
絵名が歩き出す。それについていくように俺も歩き出した。
「すること、?」
「帰る方法を探す、とかか?」
自分なりに真剣に考えた結果がこれだ。
だが、
«え?なに言ってるの?»
急に目のハイライトが消えた。
«帰れるわけ無いじゃん。そんな簡単に帰る方法が見つかるんだったら私、もうとっくにこの世界抜け出してるよ?»
«帰る方法が見つからないからここにいるのに。いとは私がポンコツ探偵だから見つけられなかっただけとでも思ってるの?»
«そもそもここに来る前日本で死んだの忘れた?»
«もし戻れたとしてももう死んでるんだよ?帰る意味、なくない?»
「!」
「自分が死んだこと、忘れてたと言ったら嘘になる。認めるのが少し怖かったんだ。」
「自分が死んだって言うことを認めるのが…」
「だから、、、怒らないで、」
«別に怒ってなんかないよ»
目のハイライトがもとに戻る絵名を見て、ホッとした俺をよそにまた絵名が歩き出す。
«忘れてないか確認しただけ!»
«そんな忘れん坊ないとに答えを教えてあげよう!»
「答え…」
何だったんだ?でも帰る方法を探す、以外となると…
«それは!!!»
«今夜の寝床や服などの生活用品を揃えることっっ!!!»
想像していたよりも普通だったと思ったことは黙っておこう。
「な、なるほどね、!」
「でも、俺この世界の文字読めないしなぁ、なんて書いてあるのかわからなかったら揃えようがないかも…」
«実は私、この世界の文字もう読めるんだよね!»
習得早すぎないかこの女。
「す、すごいな!!じゃあ絵名がこの世界を案内してくれるか?」
«もっちろん!端から端まで案内したげる!!»
他にも転生してきた人間がいて良かった…
昨日助けてくれた青年が転生を知っていたからもしかしたらと思っていたが、本当にいるとは。
おかげで助かった。これからはしばらく絵名にすがるしかないか…
«ほら、もたもたしてたらおいていくよ〜?»
「あ、待って!」
不安の中、作り笑顔で絵名の元向かう俺は、十分偉いと思う。
おしまい★まだまだ続くよ〜
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。