歩きながらチラッと彼女を見ると
その視線に気づき
優しく微笑んでくる。
俺にとっては?
こんなにドキドキして
こんなに嬉しいのは
俺だけなの?
そう思うと胸が苦しくなった。
相変わらず
余裕があるように振る舞う彼女。
本当は
俺を避ける為に
引越したくせに、、、
俺から連絡がくるのを
避ける為に
番号を変えたくせに、、、
そう言うと傷つくってわかってて
言わないんだ。
それが彼女なりの優しさなのか、
これが大人というものなのか、、、
忘れちゃったの?
と聞きながら微笑んでくる。
その時彼女のスマホが
鳴り出した。
彼女は電話に出ると、
カバンから手帳を取り出し
何やらメモを取っていた。
カバンが落ちそうになっていた為
カバンを持ち上げる。
するとボールペンを持った方の手で
《ごめん》とジェスチャーをしながら
彼女はカバンを預けてきた。
電話先の見えない相手にも
お辞儀をする姿を見て
思わず笑ってしまった。
そんな些細な事でも
一緒なのが嬉しくて、
ついつい顔がにやけてしまう。
俺って単純だなと思いながらも
喜びを隠せなかった。
そういえばさっき預かったんだった。
預かったことをいいことに、
俺はある事を思いついた。
困ったように笑う彼女。
でもここで引き下がったら、
絶対後悔する。
だけど
そう言いながらも、、、
断られると思っていたが
まさかの返事が返ってきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!