仕事が終わり、
本当だったら
帰るのが嬉しいはずなのに
足が重い。
そしてシェアハウスのドアノブに
手をかけたまま
時間だけが過ぎていく。
どうしても
ただいま!と言って
開けることが出来ずにいた。
紫耀は朝見たことを
全てジンに話した。
ジンに促され、
玄関のドアを開ける。
そしてリビングに行くと、
皆それぞれ自分の事をしていた。
その中に見えたのが、
ダイニングテーブルの
椅子に座り
おかゆを食べているあなたと、
その向かい側に座る廉だった。
紫耀は水を飲もうと
キッチンに向かう。
てっきりあなたは
自分の元へと来てくれると
思っていたが、
紫耀はあなたの事をスルーして
そのまま冷蔵庫へと
向かっていった。
そんな紫耀を、
ちょこちょこっと
追いかける。
そしてもう一度
紫耀の腕を掴もうとした
あなたの手を
パシッッッ
紫耀が勢いよく跳ねのけた。
あなたは跳ねのけられた手を
引っ込めて
椅子に座った。
岸の言葉をさえぎり
そう言ってはみたものの、
あなたの目には涙が沢山
溢れてきていた。
それだけ言い残すと
紫耀はリビングを
出て行ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。