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第1話

不登校1
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2020/09/06 07:18
その夏私は教師を目指そうと思った。奈子先生みたいな教師になりたいと思ったんだ。
今回成長した私、坂下歩は地元に帰ってきていた。
「なつかしいな……奈子先生元気かな?」
奈子先生は私の恩師で私の担任だった先生でした。優しくてキレイな先生でした。
奈子先生は私を不登校から救ってくれたんです!私のヒーローなんです!
私は奈子先生を目指して教師になって明日から坂原市八鹿高校で働きます!
今回はそんな私の過去の話です。







坂下歩の過去編

『お母さんどうゆうこと?転校なんて聞いてないんだけど?!私明日友達と出かける予定だったのに……』 半泣き状態の歩は母親に抗議している。
『しょうがないじゃない!お父さん転勤することになったんだから。』
父親の転勤のせいで毎回仲良しの友達とさよならをしなくてはならない……
『歩なら大丈夫よ!お友達作るの上手じゃない!次の学校でも上手くいくわ!』
母親になだめられて少し落ち着いたものの歩は空っぽになってしまった部屋を見つめた。
『最悪……』
大人はわかっていないのだ!仕事で転勤になって転校する度に友達には冷められてしまう……
クラスが変われば話すことが減るように、学校が変われば友達との距離が生まれてしまう!
歩は泣きながら布団にもぐった。明日には引越しのトラックが来てしまう。この街ともお別れなのだ。




『歩起きなさい!トラック来ちゃうじゃない!ほらはやく着替えて!』
母親に急かされて近くにあったズボンとTシャツを着る。
『おはよう!お母さん……昨日はごめんなさい』
歩は転校する度に気持ちを切り替えて頑張る!と決めているのだ。
『お母さんこれってこっちに置けばいーい?』
母親のお手伝いをしながらダンボールを運んでいる。
『それで最後ね!私たちも移動しましょう!少し長くなるから寝ていてもいいわよ!』
ゆらゆらと体が揺れているうちに歩は寝てしまった。目が覚めたら違う街に着いてるだろうか?
歩は考え事をしつつ熟睡した。


ようこそ!我が街へ


目が覚めると二階建ての家の前に車が止まっていてトラックから荷物を運び出していた。
ゆっくり車から出て近くを散歩する。
ずいぶんと田舎に来たようだ。
『なんて街なのか後で聞いとこう!』
数時間後トラックはいなくなり母親が歩を呼んだ。
『お弁当食べましょう!今日の夜はこれで許してね!』
母親に渡されたおにぎりを食べて部屋に入ってみる。
『明日から学校かぁ……大丈夫だよね!』
自分にたたみかけるようにおまじないを唱えて布団に入る。
おやすみなさい……母親が電気を消して下に降りていく。



いざ八鹿高校へ


『歩朝食できたからね!制服着替えて降りといで!』
母親に言われた通り制服を着て1階に行くと歩の大好きなフレンチトーストが並んでいた。
『美味しそう!いただきます❗』
口いっぱいに頬張るとメープルシロップが口の中でほどけた。
『美味しい……』
身仕度をすませて靴を履く、
『行ってきます!』
家を出た歩は昨日の会話を思い出した。
八鹿高校はフレンドリーな生徒が多い賑やかな学校らしい。
クラス内ではみんなが仲良しで昼休みなどによく遊んでいるらしい。
見学に行った時も怪我した生徒を運んでいた所を見た。
『きっと素敵な学校なんだろうな……』
職員室にノックをして中に入ると担任の先生が迎えてくれた。
名前は鈴木先生とゆうらしい。
『初めまして!あゆみです!今日から2の4でお世話になります!』
あいさつをすませると鈴木先生が、ではクラスに行きましょうか?と案内をしてくれた。
緊張しながら中に入ると、自己紹介をするように言われた。
歩が自己紹介をする。
『中野高校から来ました。歩です。仲良くなりたいです。お願いします!』
クラスの全員が笑顔になって拍手をしてくれた!
やっぱりいい所なんだ……考え事をしていると1人の女の子が近ずいてきて、
『よろしくね❗歩さん!私は学級委員の社鏡よ!分からないことがあったら聞いてね!』
『鏡さんよろしくね!』
わたし的には仲良くしようと発した言葉だったが、一瞬空気がひんやりした気がした。
3コマの授業を受け終わると、1人の女の子が近ずいてきた。気弱そうな子だった。
『これから酷いことが始まるけど絶対に口を出さないで!私は笹野優希……またね……』
わけが分からないでいると1人の男の子が教室のドアとカーテンを閉めて鏡さんに合図を送った。
鏡さんは思い切り女の子を蹴り飛ばした。
バンと鈍い音がして女の子は倒れ込んだ。
『今日お前先生にちくろうとしたよな?何事なの?』
女の子は鏡さんの靴に頬をすりつけて、あやまっている。
奇妙な空間だった。なぜ?誰も止めない?なぜ笑っている?
歩にとってそれは気持ち悪く感じるものだった。
止めに入ろうとした時、優希が言っていたことが頭をよぎった。
これから酷いことが始まるけど絶対に口を出さないで……
あれは新入りへの警告だったのだ。つまりここで私を試しているんだ。
裏切り者か味方か……おそらく裏切れば私が彼女の代わりになる。
今まで上手くやってこれたのは、空気を読んできたからだ。
ならば正解は……もう決まっているのだ。
彼女を無視する。絶対に助けてはいけない。
歩は目をそらして敵意がないことを鏡に見せた。
『空気の読める子ね!気に入ったわ!』
すると、教室の外から男子が走ってきた。
どうやら先生が帰ってきたようだ。
みんなは席に座る。
完璧に仕組まれているのによく気づかないものだな……このクラスはやばいかもしれない……






そんな日が続いた時、担任が病気になり、私たちの担任は奈子先生と言う先生に変わっていた。
感が鋭い先生で、いじめが発見された。
一人一人にアンケートをとり、鏡さんへとたどり着いたのだった。
奈子先生へ告げ口したのはまさかの優希だった。
鏡さんがいじめの主犯者だと……
私は奈子先生にいじめは悪いことなのだと、いけないのだと、当たり前のことを言われただけのに、
それ以来学校を休んでしまった。今までの自分を否定された気分だった。
毎日毎日奈子先生が家にきたが話せなかった。
奈子先生は自分のせいかもしれないと、母に言って私は先生と話すことにした。
話の内容はその時その時で、毎回違った。
好きな芸能人
動物
勉強
そして教師のお仕事……
私は話す度に奈子先生に興味を持った。
そして奈子先生のおかげもあって学校に行った。
そして驚いた。鏡さんがいない……転校したのか?さらに教室のドアが外れていた。
本当にびっくりした。変わり果てた教室は先生のおかげなのだと感じた。
それからは毎日毎日学校に行って楽しく過ごした。
例えるのならば天国と地獄
卒業式で私が教師になりたいと言ったら奈子先生は
『辛いことを経験した人は人の気持ちを考えられる素晴らしい教師になれるよ!』
と応援してくれた。





そして現在
私は八鹿高校で働くこととなった。奈子先生が変えた学校で働くのは嬉しかった。
だからあんなことになってたなんて認めたくなかった……

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