6日目の夜。
窓辺に置いた氷華は、まだ固い蕾のまま。
水を与え、魔力もわからないながらに注ぎ込んでみた。
だが芽が出てからというもの、一向に咲く気配を見せない。
焦燥が胸を掻き立て、何度も図書館から借りてきた本を開く。
“魔力を水に込めよ”
“精霊の力を信じよ”
どれも曖昧で、答えに辿り着けない。
ページをめくる手は震え、文字は頭に入らず、気付けば窓から差し込む月明かりがぼやけて見える。
本に顔を伏せたまま、いつしか瞼が重く落ちていった。
――そして夢の中。
白い霧に包まれた静謐な空間に立っていた。
現実の重苦しい疲労はなく、代わりに胸の奥が妙に澄み切っていくような感覚。
背後から、柔らかい声がした。
振り返っても姿は見えない。
ただその声は、温かくて、少し寂しげだった。
あなたの下の名前は、ぎゅっと唇を噛んでうなずいた。
しばしの沈黙ののち、声が告げた。
声は次第に遠ざかり、白霧が揺れ始める。
そう言い残し、霧は静かに消えていった。
――はっと目を覚ました夢主の目に飛び込んできたのは、月光を浴びて輝く氷華の蕾。
まだ固く閉じてはいるが、どこか今までよりも透明に見えた。
その呟きは、自分自身を奮い立たせる誓いのように響いた。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。