第12話

第十一章:白紙の舞台
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2025/06/24 11:00 更新
静寂。
それは、まるで音そのものが凍ったかのような無音の世界だった。

壁はない。天井もない。床さえ、確かではない。
ただ白。どこまでも、白い空間。
HN
HN
……ここが、“外”?
ハンがつぶやいた。
FL
FL
ここは、誰も台本を書かなかった場所だ
フィリックスは答える。
声すらも、響きのない空間に沈んでいくようだった。

記録されない。保存されない。監視されない。
“存在”そのものが誰にも観察されない領域。
かつて「Truman Project」のすべてが囲い込んでいた舞台の“外縁”。
HN
HN
ずっと……この外側に出たかったはずなのに……
ハンは自分の指先を見つめた。
そこに、色がなかった。輪郭も、曖昧だった。
FL
FL
ここは、何もないんじゃない。
――何も決められていないだけだ
フィリックスは、そう言って小さく息を吸い込んだ。
FL
FL
たとえば……こう
彼が手を動かすと、白の中に薄い青色が現れた。
HN
HN
……!?
FL
FL
“海”。そう思えば、そうなる。
誰も台本を書いていないから、
今この瞬間、俺たちの想像だけが現実になる
波の音が、ゆっくりと空白を揺らす。
視界が淡く滲み、やがて“光”が差し込んだ。

空ができる。風が吹く。
太陽が、ふたりを照らす。
FL
FL
ハン、お前の見たい世界は?
HN
HN
ハンは、じっとその景色を見つめた。
HN
HN
……静かで、でもちゃんと息ができる場所。
自分が“生きてる”って、誰にも見られてなくても思える場所
FL
FL
じゃあ――その場所を、作ろう
フィリックスが差し出した手を、
ハンは、ためらわず握った。

すると今度は、草原が生まれた。
名前も、記録もない空間に、確かな“生”の輪郭が描かれていく。

(これが、自由なのか)

初めての実感だった。

与えられた感情でもなく、
強制された行動でもない。
誰の視線もなく、自分の内側から湧いた、
意思だけで選びとった世界。
HN
HN
……でもさ、フィリックス
ハンは草の上に寝転がりながらぽつりと言った。
HN
HN
この場所に、俺たちがいるってことは――
やっぱり、もう“あっち”には戻れないんだよね?
フィリックスも空を見上げる。
FL
FL
戻る必要、あるか?
HN
HN
ない。……たぶん。
ただ少しだけ、あの頃の自分が“かわいそう”だったなって思っただけ
沈黙。
そして、やわらかな笑み。
FL
FL
だから、ここで決めよう
フィリックスは言った。
FL
FL
演目でもなく、プログラムでもなく――
ふたりだけの物語の最初の一行を。
ハンは起き上がり、笑う。
HN
HN
そんなの、もう決まってるよ
彼は、草をかき分け、目の前の白い地面に指で文字を書く。

> “ここに、生きている。”



言葉はやがて、風に舞う光へと変わった。
世界の“最初の一節”が、ふたりの呼吸の中で誕生する。

物語は、ようやく始まったばかりだ。

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