小説更新時間: 2025/07/06 07:19
完結
『Truman:月の椅子』

- ファンタジー
- 気づかないふりをした
最初に音が消えた。
次に色が消えた。
最後に、自分という存在がどこにあるのか、わからなくなった。
真っ黒な空間。
壁も床も、境界すらわからない。
その中心に、“椅子”がひとつ、ぽつりと置かれていた。
だれかがそこに座っている。
だけど、顔が見えない。
輪郭が曖昧で、まるで――虚像のようだった。
「起きて」
どこからか、声が聞こえた。
囁くように、耳元で。
それは命令ではなく、懇願のようでもあった。
「……誰?」
そう問いかけようとして、声が出ない。
言葉を失った自分がそこにいる。
誰かのつくった“夢”の中で、
自分が演じさせられていることに、気づくことさえ許されなかった。
どれほどの時が過ぎたのだろう。
呼吸をした覚えもない。
感情の起伏もなかった。
ただ、プログラムに沿って、生かされていた。
そして――その“夢”に、小さなひびが入る。
ふと、空間のどこかで「目」が開かれた。
それは誰かに見られているという感覚ではない。
こちらが、誰かを見返している感覚だった。
「……ここは……」
かすかに漏れた声。
音がある。痛みがある。息がある。
虚構の中で凍っていた“自我”が、
わずかに熱を帯び始める。
これは、夢だ。
でも、もしこれが夢なら――俺はいつから、目を閉じていた?
やがて、月のような鈍い光が差し込む。
誰かが、手を伸ばしてくる。
遠いようで、すぐそばにいる。
その指先に触れた瞬間、
世界が回転し、すべてが反転する。
――目を覚ませ。
世界は、まだ始まっていない。
それが、すべての始まりだった。
次に色が消えた。
最後に、自分という存在がどこにあるのか、わからなくなった。
真っ黒な空間。
壁も床も、境界すらわからない。
その中心に、“椅子”がひとつ、ぽつりと置かれていた。
だれかがそこに座っている。
だけど、顔が見えない。
輪郭が曖昧で、まるで――虚像のようだった。
「起きて」
どこからか、声が聞こえた。
囁くように、耳元で。
それは命令ではなく、懇願のようでもあった。
「……誰?」
そう問いかけようとして、声が出ない。
言葉を失った自分がそこにいる。
誰かのつくった“夢”の中で、
自分が演じさせられていることに、気づくことさえ許されなかった。
どれほどの時が過ぎたのだろう。
呼吸をした覚えもない。
感情の起伏もなかった。
ただ、プログラムに沿って、生かされていた。
そして――その“夢”に、小さなひびが入る。
ふと、空間のどこかで「目」が開かれた。
それは誰かに見られているという感覚ではない。
こちらが、誰かを見返している感覚だった。
「……ここは……」
かすかに漏れた声。
音がある。痛みがある。息がある。
虚構の中で凍っていた“自我”が、
わずかに熱を帯び始める。
これは、夢だ。
でも、もしこれが夢なら――俺はいつから、目を閉じていた?
やがて、月のような鈍い光が差し込む。
誰かが、手を伸ばしてくる。
遠いようで、すぐそばにいる。
その指先に触れた瞬間、
世界が回転し、すべてが反転する。
――目を覚ませ。
世界は、まだ始まっていない。
それが、すべての始まりだった。
チャプター
全13話
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