「……あれ、あなた!」
「嘘…あなた!やっと戻ってきたんだね…!」
教室に入るや否や、
色んな人が私に話しかけてくれた。
「…うん、おまたせ」
昨日、あの後私は家族や先生に相談し、
『学校に復帰したい』という気持ちを伝えた。
そんな私をみて、
みんな驚いた顔をしたが、
優しく微笑んで受け止めてくれた。
「…えっと、蒼斗…いる?っていうかどの教室とか分かる…?」
私が蒼斗の名前を出すと、
みんな驚いた顔をしていた。
「…そ、蒼斗はこの教室。多分時間的にそろそろ来ると思うけど…。あなた、蒼斗のこと思い出したの?」
私は首を横に振った。
……蒼斗のことを思い出せたわけではない。
今話してる友達のことも、
お見舞いに来てくれて、
名前と顔が一致してる程度。
一応、断片的には、思い出せる友達もいるけど…。
「…そっか、あ、蒼斗来たよ!おはよー、蒼斗」
……蒼斗っ。
友達が向いてる方を見ると、
確かに制服を着た蒼斗がいた。
蒼斗の表情は少し暗く見える。
「おはよーっ。……あなた…っ」
蒼斗はみんなに笑顔で挨拶してたが、
私の顔を見た瞬間表情が固まった。
「…おはよ、蒼斗」
「学校…来たんだ…」
「…うん、私なりに決心できたから。…後で、ゆっくり話せる?」
私が蒼斗に聞くと、
蒼斗は私の方に歩いてきた。
…そして、すれ違いざま、
『放課後、屋上で待ってる』と言った。
返事をしようとしたが、
チャイムと同時に入ってきた担任の
「よし、SHR始めるぞ〜!」
という声に私の声は掻き消されてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。