第10話

消去
49
2026/07/26 22:00 更新
ダーマの親指が、カチリとボタンを押した。

スキャナーの青光が、車体の中をなぞっていく。車内の空気が、凍りついたように張りつめた。微弱な電磁波が走り、検問ゲートの光が一瞬だけチカチカと瞬いた。

「おい、認証が通らねぇぞ!?」
「止まれッ!!」
ダーマ
っ!


後方・・のレーンから警備兵の怒鳴り声。

ザカオ
後ろだ!
マサイ
あのトラックか!
次の瞬間、後続のトラックが急発進した。スキャナーを避けようとしたのか、前方の遮断ポールに激突する。鈍い衝撃音。煙と火花。警報が鳴り響く。
シルクロード
っ、ダホ出せ!
ンダホ
っぁ、っはい!
シルクが指示を出した。ンダホはギアを一気に上げ、ハンドルを切る。車が滑るようにレーンを飛び出し、トラックの残骸の脇をすり抜ける。警備兵が何か叫ぶが、爆煙とサイレンの中で聞こえない。
煙の向こうから突き抜けるように、陽光が差し込む。橋の出口が見えた。エンジン音が跳ね上がり、タイヤが火花を散らす。車は橋の最後のゲートを突破し、未来都市側の高架道路へ飛び出した。

音が一瞬、遠のく。後ろを振り返ると、ゲートの向こうでは煙がまだ立ち昇っていた。シルクは額の汗を拭い、短く言う。
シルクロード
......行った
ンダホ
検問、通過成功!?
マサイ
よし!やったぞ!
ザカオ
奇跡だろこれ!
ダーマ
あっぶねぇ...
モトキ
......
モトキは黙って、窓の外を見ていた。彼の瞳には、灰色の都市の向こうに立ち上がる白い塔が映る。
モトキ
(……未来都市)


あぁ、もう億劫だ。
車内の空気が、ふと冷える。未来都市の高架を走り抜ける風が、窓ガラスを震わせる。外は白い塔の影。中は、少しだけ気まずい。モトキがぽつりと訊く。
モトキ
てかさ、俺を保護して、その後どうすんの?
モトキ
ずっと守り続けられても、正直困るんだけど
ダーマ
スーッ......
ザカオ
ぁ......あぁ、......あ?
ンダホ
あ〜......ん〜......え〜......
マサイ
???
シルクロード
......
モトキ
え、決めてないの?
シルクロード
なんとかなるかなぁって、思って
モトキ
……マジ?
シルクロード
マジ
車内に、笑いとため息が同時に混ざる。空気がさらに気まずくなる。誰かが窓の外を見て時間稼ぎをする。

そのとき、後部のザカオが肩を竦めて口を開いた。
ザカオ
じゃあさ、紋様消すってのはどう?
ダーマ
紋様を?
ザカオ
うん。噂でさ、紋様消しの店があるって友達から聞いてさ。結構、裏ルートらしいぜ
マサイ
...ありだな
シルクロード
場所は?
ザカオ
まぁ、その......知らねぇの。聞いたってだけ
マサイ
知らねぇのかよ!?
ダーマ
まぁもしその店が本当にあるなら、可能性はある
ダーマ
紋様を隠すか消すかできれば、未来都市での居住登録も楽になる
モトキ
......
モトキは自分の腕を見る。この紋様が、予言の子の印。
モトキ
簡単に言うけどさ、それって本当に安全なの?
ダーマ
安全を今のこの世界であまり期待すんな。ただ選択肢としてあるだけだ
シルクロード
よし、とりあえず次の補給ポイントで聞き込みだ
シルクロード
明日の朝、街のマーケットと古物屋を当たる。情報屋にも電話する
マサイ
わかった

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