ダーマの親指が、カチリとボタンを押した。
スキャナーの青光が、車体の中をなぞっていく。車内の空気が、凍りついたように張りつめた。微弱な電磁波が走り、検問ゲートの光が一瞬だけチカチカと瞬いた。
「おい、認証が通らねぇぞ!?」
「止まれッ!!」
後方のレーンから警備兵の怒鳴り声。
次の瞬間、後続のトラックが急発進した。スキャナーを避けようとしたのか、前方の遮断ポールに激突する。鈍い衝撃音。煙と火花。警報が鳴り響く。
シルクが指示を出した。ンダホはギアを一気に上げ、ハンドルを切る。車が滑るようにレーンを飛び出し、トラックの残骸の脇をすり抜ける。警備兵が何か叫ぶが、爆煙とサイレンの中で聞こえない。
煙の向こうから突き抜けるように、陽光が差し込む。橋の出口が見えた。エンジン音が跳ね上がり、タイヤが火花を散らす。車は橋の最後のゲートを突破し、未来都市側の高架道路へ飛び出した。
音が一瞬、遠のく。後ろを振り返ると、ゲートの向こうでは煙がまだ立ち昇っていた。シルクは額の汗を拭い、短く言う。
モトキは黙って、窓の外を見ていた。彼の瞳には、灰色の都市の向こうに立ち上がる白い塔が映る。
あぁ、もう億劫だ。
車内の空気が、ふと冷える。未来都市の高架を走り抜ける風が、窓ガラスを震わせる。外は白い塔の影。中は、少しだけ気まずい。モトキがぽつりと訊く。
車内に、笑いとため息が同時に混ざる。空気がさらに気まずくなる。誰かが窓の外を見て時間稼ぎをする。
そのとき、後部のザカオが肩を竦めて口を開いた。
モトキは自分の腕を見る。この紋様が、予言の子の印。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。