呼ばれると、すぐに反応する。
それが当たり前になった。
「あなた」
声が聞こえた瞬間、顔を上げる。
そこに廉がいるかどうかが、すべてだった。
「いい子」
その言葉で、世界が整う。
鏡を見る機会は減った。
必要がないから。
「俺が見てる」
「それで十分でしょ」
うん、と頷く。
その返事に、もう迷いはない。
外の世界を思い出そうとすると、
ノイズみたいに、すぐ消える。
「考えなくていいよ」
「ここにあるのは、正解だけだから」
夜、灯りが落ちる。
廉の気配が近くにある。
「愛してる」
その言葉を聞いて、目を閉じる。
怖くない。
不安もない。
ただ、静かで、完璧で、
廉の声だけが、すべてだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!