「ねえ」
ある日、廉がいつもより近くに座った。
距離が近いことに、もう驚かない。
「もしさ」
「ここから出られるって言われたら、どうする?」
胸が、きゅっと縮む。
出たい、はずだった。
なのに、想像すると息が詰まる。
「……分からない」
そう答えた声は、思ったより小さかった。
廉は、少しだけ黙ってから言う。
「無理しなくていいよ」
その一言で、全身の力が抜けた。
「あなたは、もう十分頑張った」
「選ばなくていい場所に来ただけ」
涙が出た。
理由は分からない。
廉は何も言わず、背中を撫で続ける。
「泣いていい」
「俺がいる」
その言葉に、初めてはっきり思った。
────逆らわなくていいんだ。
怖さより、楽さが勝った瞬間だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。