目を覚ましたとき、天井が白かった。
知らない部屋なのに、やけに整っている。
「起きた?」
廉は、すぐ隣にいた。
心配そうに覗き込むその顔は、
記憶の中と変わらない。
「……ここ、どこ」
喉が渇いて、声がかすれる。
「安心して」
「ちゃんと安全な場所だよ」
水を差し出される。
受け取ってしまった自分に、遅れて恐怖が湧いた。
「ごめんね」
「驚かせるつもりはなかったんだけど」
そう言いながら、廉は自然な動作で扉に視線を向ける。
鍵が、そこにある。
「外はさ」
「君には、刺激が多すぎる」
髪を撫でられる。
拒否しようとすると、声がさらに柔らかくなる。
「嫌なこと、考えなくていい」
「俺が全部やるから」
時間の感覚が曖昧になっていく。
朝なのか夜なのか、分からない。
廉は、必ずここに戻ってくる。
食事も、言葉も、表情も、一定だ。
「いい子だね」
「落ち着いてきた」
その言葉を聞くと、胸が少しだけ軽くなる。
それに気づいて、怖くなった。
「外に出たい?」
突然の問いに、言葉が詰まる。
出たいはずなのに、想像すると頭が痛い。
「……分からない」
そう答えると、廉は満足そうに頷いた。
「それでいい」
「考えなくていい証拠だから」
手錠の音が鳴る。
もう、その音に驚かなくなっていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!