〈KAITO目線〉
平日。
今日は学校がある。
…行きたくない。
周りの目が怖い。
味方が学校にいないのが怖い。
いじめが怖い。
上履きがなくなってるかもしれなくて、なくなってなくても、画鋲が入ってるかもしれない。
そんな俺自身の思考が怖い。
痛覚を無くしてしまいたい俺がいることが怖い。
いっそ、感情なんてなくなってしまえ、死んでしまえって思ってしまう、自分が怖い。
俺自身も、「俺」が怖いのか、「学校」が怖いのか。
わからないのが、怖い。
靴箱に来て、俺の上靴があることに安心する。
でも中には画鋲が入っていて怖くなる。
画鋲も、大量に入ってるんじゃなくて、周りから見て「画鋲が入ってる」ってわからないように少しだけ入れるという、陰湿なやり方。
怖いな、教室に入りたくない。
どうせ、バケツで水をかけられるんだ。
辛い、怖い、寒い、…
ドアの前で立ち止まる。
耳をすますと、少しだけ、くすくすという声が聞こえた。
下駄箱でクラスの人に見られたかな…
入ったらかけられるのかな?
深呼吸して、大丈夫。大丈夫だから。
そう、何回も何回も心の中で唱える。
自分を落ち着かせる、おまじない。
ガラガラ
…良かった、水はかかってない。
安心した、だけど、
床に転がってた空のバケツに引っかかって、こける。
その瞬間。
上から水がかけられた。
着替えにいかなきゃな…
体操服、目立つからやだな…
先生も見て見ぬふり、か…
えこひいき、かな…
それより、屋上…大丈夫かな、殺されないかな…
いや、いっそ、死んだ方がまし…かも…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。