第7話

やっぱり愛おしい - Kokoro × Momona
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2024/06/05 17:48
私は今、非常に困っている。


いや、困っているというか、


どうすればいいかわからないというか。


嫌ではないけれど、好むような状況でもないことは確かで。
Momona
Momona
ここ氏!好きです!

付き合ってください!
Kokoro
Kokoro
ごめんね、でも桃奈ちゃんまだ高校生だから
Momona
Momona
ここ氏!

今度ここ氏のお部屋行っていいですか?

餃子パーティーしましょ?
Kokoro
Kokoro
うぅ〜ん、最近は遅くまでお仕事があって、

ちょっと忙しいかな、、
Momona
Momona
じゃあ、週末にデートしましょ!

遊園地デート!!
Kokoro
Kokoro
いや、私、

人が多いとこあんま好きじゃなくて、、
毎日毎日、飽きもせず、


私のお家の玄関にやってきてはそんな言葉を残して、
Kokona
Kokona
あっ、またやってる〜
Momona
Momona
ちょちょな、おは〜
Kokona
Kokona
じゃあ行ってくるね、おねぇちゃん
Momona
Momona
じゃあまた明日!心ちゃん!
私の妹と共に学校へと向かってしまうのだ。


彼女のことは幼稚園生のときくらいから知っていて、


家族ぐるみで仲良くさせてもらっている、


いわば幼馴染ってやつで。


昔は「心ちゃん、心ちゃん」って


私の後を追いかけてくる可愛い妹だったのに、


今となっては、トレードマークだったロングをバッサリ切って、


ウルフカットの中性的な、


巷で話題のイケメン女子というやつになってたりして。


正直、見惚れないかと言われたら、


そりゃ有無を言わせないビジュアルだけど、


5つ下の高校生の幼馴染、


ましてや妹の親友ときたら、


彼女の気持ちに応えてあげることはできなかった。


だから、、
Kokoro
Kokoro
ごめん、こういうのはもう最後にしよう
そう言ってあなたに背を向けたのは私なのに、


追いかけてきてくれないかな、


なんて密かに願っていた自分に気づかないふりをしたそれは悲しい夕立。


それからというもの彼女は私の家に来るたび、


おはようございます以外の無駄な話をすることはなくなり、


笑った顔が妙に痛々しくなった。


それから、もう3年の月日が経ち、


一人暮らしを始めた私は彼女と全く顔を合わせなくなり、


家族とすら、頻繁に会える機会がなくなったそんな日。


押し入れにしまっておいた、印鑑を取り出そうと


中を探っていると、思わず手に取ってしまった家族アルバム。
Kokoro
Kokoro
うわぁ〜懐かしいぃ〜〜
と一人の部屋で声を出してしまうほど、


どれもその日の記憶を蘇らせる懐かしい写真ばかり。


このときは心菜が転けて、大号泣して大変だったなとか、


私が財布を落として、みんなで探し回ったなーとか


思い出すだけで、頬が緩んでしまうちょっとおバカな


でも愛らしい記憶たちばかりで、


私は手を止めることなくアルバムをめくり続ける。
Kokoro
Kokoro
あっ、、
めくっているとふいに出てきた彼女の写真。


まだ若いけれど心菜を守るようにそこにいる彼女は小さいのに力強くて、


この数年後にはかっこいいお姉さんになる未来が薄っすらと顔を覗かせていた。


今頃、心菜と桃奈ちゃんはどうしているんだろうか?


まだ仲がいいんだろうか?


“彼女はまだ私を?”


とそんな事を頭に浮かべた瞬間、アルバムを閉じる。


バカバカしくなって、虚しくなって、


きっと今はもう私のことなんて忘れているだろうと分かっているのに、


この複雑な気持ちがうっとおしくて、


私はそのアルバムを元の場所に押し込んだ。

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