赤い月が昇る夜
セレスティア家の廊下は静まり返っている
あなたは窓辺に立ち、遠くを見ていた
なぜか、胸が落ち着かない
理由は分からない
ただ今夜、ラグーザ家が来る
その事実が、妙に引っかかる
完璧な姿
完璧な令嬢
それが自分の役目
ホールに足を踏み入れる
ざわめき
視線
そして
銀髪
あなたの足が止まる
ラグーザ家三男【アレクサンドル・ラグーザ】
赤い瞳
こちらを見ている
何故か
目が逸らせない
アレクサンドル・ラグーザも、
彼女を見た瞬間に理解する
変わっていない
あの時より、大人になっただけだ
でも
その瞳に、自分は居ない
アレクサンドル・ラグーザは歩く
逃げない
今度は
形式的な会話
彼は一瞬だけ目を細める
♪〜
音楽が始まる
手を取る
触れた瞬間
あなたの呼吸が乱れる
懐かしい
でも記憶がない
彼は何も言わない
ただ、強く握りすぎないように気を付ける
心臓が強く跳ねる
平静を装う
私はじっと彼を見る
その響きに、なぜか胸が締め付けられる
音楽が止まる
手が離れる
あなたは去る
サーシャはその様子を見送る
声には出さない
出せない
今はまだ
ホールの奥で、両家の当主が
静かに言葉を交わしている
何かが動き始めているでも二人は知らない
あの日の約束が、まだ終わっていないことを。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。