ーー三日後
セレスティア家の馬車が
ラグーザ邸へと向かっていた
あなたは窓の外を見ている
ただの家同士の会談
個人的な感情は不要
それが正しい
門をくぐる
豪奢な屋敷、敵の家
応接間へ通される
重たい空気
公爵同士の視線が交差する
あなたは静かに席についた
しばらくして扉が開く
サーシャが入ってくる
赤い瞳が、真っ直ぐこちらを見る
一瞬だけ、ほんの一瞬視線が絡む
形式的な返し、何も乱れていない
なのに、
彼は少しだけ口元を歪める
会談が始まる
商談の話、土地の話、牽制
言葉の刃が交わる
私は黙って聞いている
余計なことは言わない
そのはずなのに、
ふと彼の声が低くなる
空気が凍る
指先が、わずかに強張る
赤い瞳がこちらを見る
即答、迷いなく
でも、
その言葉が自分のものなのか、分からない
彼の目が、ほんの少しだけ揺れる
一瞬だけ
会談はそこで区切られた
ーー廊下
私は一人で立っていた
足音が近づく
あなたの目は、澄んでいる
何も知らない目
サーシャは一歩近づく
一歩下がり、彼は背を向ける
突然、足を止めた
その声は、少しだけ寂しそうだった
分からない、何故
あの声に、胸が締めつけられるのか
会談は再開される
表面上は何も変わらない
彼は知っている
彼女は知らない
この差が、確実に二人の間に横たわっている
ーーその夜
あなたは夢を見る
ぼやけた景色
高い塀
泣いている声
誰かの手
銀髪、赤い瞳
そこで目が覚める
私は息を整える
知らないはずなのに、懐かしい
物語は、ゆっくりと
確実に
何かを揺らし始めている












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。