第5話

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2026/03/02 15:00 更新


 ーー三日後


 セレスティア家の馬車が
 ラグーザ邸へと向かっていた

 あなたは窓の外を見ている
あなた
(落ち着いて…)


 ただの家同士の会談


 個人的な感情は不要
 それが正しい




 門をくぐる


 豪奢な屋敷、敵の家
 応接間へ通される


 重たい空気


 公爵同士の視線が交差する
 あなたは静かに席についた




 しばらくして扉が開く




 サーシャが入ってくる

 赤い瞳が、真っ直ぐこちらを見る
 一瞬だけ、ほんの一瞬視線が絡む
kzh
…久しぶり
あなた
3日ぶりです

 形式的な返し、何も乱れていない


 なのに、
 彼は少しだけ口元を歪める
kzh
そうだな、



 会談が始まる


 商談の話、土地の話、牽制
 言葉の刃が交わる


 私は黙って聞いている
 余計なことは言わない




 そのはずなのに、
 ふと彼の声が低くなる
kzh
セレスティア家は随分と
娘を大切にしているらしいですね
セレスティア公爵
当然、
kzh
檻の中で守るのも、愛ですか?

 空気が凍る
 指先が、わずかに強張る
あなた
……
セレスティア公爵
言葉を選べ
kzh
選んでます


 赤い瞳がこちらを見る

kzh
だろ?
あなた
…私は不自由ではありません



 即答、迷いなく


 でも、
 その言葉が自分のものなのか、分からない


 彼の目が、ほんの少しだけ揺れる
 一瞬だけ




 会談はそこで区切られた

 ーー廊下


 私は一人で立っていた

 足音が近づく
kzh
なぁ、さっきの
あなた
挑発ですか?
kzh
違う




kzh
…怒らねぇの
あなた
何にですか
kzh
檻って言われて


あなた
…守られているだけです



kzh
…それ、誰の言葉だ
あなた
kzh
いや、
kzh
まだか…


 あなたの目は、澄んでいる
 何も知らない目

 サーシャは一歩近づく
kzh
もし
kzh
檻の外に出たいと思ったら
あなた
思いません
あなた
私はセレスティア家の娘です
kzh
…そうかよ


 一歩下がり、彼は背を向ける






 突然、足を止めた
kzh
お前さ
あなた
はい
kzh
昔、怖いもんあった?
あなた
、ありません、



kzh
…そっか


 その声は、少しだけ寂しそうだった
 分からない、何故


 あの声に、胸が締めつけられるのか




 会談は再開される
 表面上は何も変わらない


 サーシャは知っている

 彼女あなたは知らない


 この差が、確実に二人の間に横たわっている

 ーーその夜

 あなたは夢を見る




 ぼやけた景色

 高い塀

 泣いている声

 誰かの手
少年
泣くな


 銀髪、赤い瞳

 そこで目が覚める


 私は息を整える
あなた
…夢


 知らないはずなのに、懐かしい

 物語は、ゆっくりと
 確実に

 何かを揺らし始めている

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