僕は貧乏な家に生まれた
毎日食べるものにも苦労するような家
それでも父も母も優しくて仲が良くて、幸せだった
それが変わってしまったのは
ある年のクリスマスだった
僕が間違えて怪我をしたのだ
雪に赤い染みができて、
ほんの数秒で血が集まるようにその染みは消えていった
そこに残ったのは
雪のなかで美しく輝く青い宝石だった
それを売ったお金でその年はクリスマスを家族でお祝いできた
二人は大いに喜び口々に僕のことを神様が自分達の所に遣わしてくれたサンタクロースだといった
最高のクリスマスプレゼントをありがとう、と
僕はこの時勘違いをしたのだ
両親の言う最高のクリスマスプレゼントとは家族でクリスマスを祝ったこの時間だと、僕との時間を最高のクリスマスプレゼントと言ってくれたのだと、そう思ってしまったんだ
しかし、春が訪れたころ僕は売られたのだ
小さな村に
一生遊んで暮らせるだけのお金と引き替えに、
そうして僕は思い知った
彼らにとってのプレゼントは僕との、家族の時間などではなく宝石であり、お金だったことを
小さな村で僕は大切にされていた
でもその優しさの奥にお金を見ないことはなかった
温かい食事
必ず入っている鉄分の多い食材
毎日飲ませてくれる薬
増血剤とビタミン剤
しっかりとした洋服
怪我をすることもできないくらいしっかりした生地
僕の血が生み出す宝石の為の優しさ
もううんざりだった
でもあの日風邪が治ったばかりの時に出ていこうとした彼、なーくんの目には絶望と羨望、
そして少しの嫌悪と恨み
嬉しかった
僕を見る瞳にお金が写っていないことが何よりうれしかったんだ
そのまま僕はなーくんと旅立った
一緒に旅するうちにな−くんの瞳から嫌悪や恨み、憎悪といった負の感情が消えていくの感じた
そんな時僕らは莉犬君と出会った
莉犬君は優しくて同じような血を持っていて、すぐに仲良くなれた
あのときのことを僕は今も後悔している
あの時僕は莉犬君と街に出た
街で偶然困っている人を見たのだ
思わず僕は血を使った、ほんの数滴の血は一瞬で宝石に変化した
それから数日経った頃
小さな村の人達が現れた
彼らは酷いじゃないかといった
君に優しくして、お金もかけて、世話をしてあげていたのに私達をおいて消えるだなんて、と
僕はその言葉を聞き彼らを軽蔑した
何処まで行っても金なのか、と
だけど両親が現れた
そして、
優しいころんなら私達の為に犠牲になってくれるよね?
そういった
僕は最後まで何処かで両親を信じていたのだ
そして、その思いを打ち砕かれ僕は絶望に満たされた
逃げられないように鎖で繋がれ、腕も足も傷だらけにされた
もう僕は神の子などではなくなっていた
ただの奴隷だった
長い長い時間が過ぎていくうちに絶望に支配されていた僕に変化が起こりだす
僕の中の絶望は村の人や両親に対する憎悪や嫌悪に変わっていた
宝石も青や白ではなく、赤や黒に変わっていった
そして莉犬君となーくんに助けられて僕の気持ちは爆発した
壊れかけていた僕はもう一度動き出す
なーくんと莉犬君への思いと長い時間で大きくなった憎悪と嫌悪を心の支えにして
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。