ゆっくりと___閉じていた瞼を開く。
あんな過去、思い出したくなかった。
後悔しかなかった。
幸せなんてなかった。
認知もされないで、
ただの足でまといで、
想いを告げることも出来ず、散った。
前世の私は、いかに根性無しで、臆病者だったか。
…………本当は、気付いてた。
文化祭の……あの日。
“上弦ノ弐”が、現れた時。
実弥と宇髄先生が、妙に見覚えのある刀と、技を繰り出した時。
頭にかかっていた霞のようなものが、
一気に晴れていった。
……前世で見た彼そのものだった。
あれは確かに、威厳のある風柱様の姿で。
あの時、私が恋に落ちた瞬間の彼そのもので___
“___今直ぐにでも俺がぶった斬ってやるからよォ”
“だからテメェは、そこで見とけ”
前世で言われた言葉。
文化祭の時も___同じような事を言われた。
___なんて、幸せ者 なんだろう ?
前世の私に自慢してやりたいくらい、今の私は幸せだ。
消し去りたい過去みたいな感じで語ってきたが、ぶっちゃけ今じゃあの思い出は笑い話みたいなものだ。
“幸せ”だからこそ、
前世の片想いを引き摺らずに、笑い話にできる。
…まぁ、彼にこの話は絶っっっ対にしないが。
いやまぁ話せば彼は何だかんだ喜んでくれるだろう。
多分ちょっと煽ってきながらも顔を赤らめたりする……かもしれない。うーん、見たい。
……が、その前に私が羞恥心で死ぬのでやめておく。
ひーちゃん……はスヤスヤ寝てるな。可愛い。
相変わらず天使だ。可愛い。
そういえば、実弥はどこ行ったんだろう。
一緒に寝ちゃったんだと思っていたが、起きた時には既に姿を消していた。
何かあったのだろうか、、、?
いや、流石に考えすぎか?
つい最近、“鬼舞辻”に襲われたばっか……
……まさか。
直ぐにひーちゃんを友人に預けた。
私だってヤワじゃない。
昔の感覚を取り戻した今なら、
少しくらい、役に立てるはず___!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。