第245話

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2021/11/30 03:52
定時を告げるチャイムが鳴って、私は席を立つ。


「お先に失礼します」
「はい、お疲れ様でした」


そう言う小島さんも、のんびり帰り支度をしてる。
なんとも緩い職場。


マキちゃんとは更衣室で待ち合わせをしてる。

久し振りの女友達とのお出掛けに、私はウキウキしていた。


「あ、立花さん」
「はい」
「気を付けて帰ってね」
「ありがとうございます」


小島さんが笑顔で手を振る。
私も笑って一礼して、社史編纂室を後にした。




更衣室でマキちゃんを待っている間に、『マキちゃんとご飯を食べてから帰ります』って社長にLINEをした。

既読はつかない。
きっとまだ忙しく働いているんだろう。


一人スマホをいじっていると、ハルちゃんから私を心配するLINEが入っていたのに気付いた。
大丈夫、ありがとうって返事を打っていると、更衣室に続々と入って来た女子社員たちの冷たい視線を感じる。

ヒソヒソ話声も。


「あの人…社長の」
「やだあ、よく平気な顔して来れるよね」


平気な訳ないじゃない。

だけど私は、何も悪いことなんてしてない。
だから社員として、ちゃんと仕事をしに会社に来る。

まだあの日から1週間経ってないし、こうなるのは仕方ないことだとわかってはいたけど…

やっぱり居たたまれない。


マキちゃん、早く来ないかなあ…




一向に既読にならないLINEのトーク画面をじいっと見ていたら、「遅くなってすいません!」ってマキちゃんの声。


「マキちゃん!お疲れ様」
「ごめんなさい、社長と常務とのお話が長引いてしまって」


マキちゃんの口から出た社長というワードに、更衣室の空気がピキンと凍る。


「あっ…すいません!私…」
「ううん、気にしないで!行こう?」
「はいっ」


刺さるような視線を一身に受けながら。

私はマキちゃんと二人、逃げるように更衣室を出た。

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