第10話

8 緑谷Side
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2023/10/26 15:26
(なまえ)
あなた
じゃあお互い頑張ろうね
緑谷出久
うん!自分の全力を出し切ろう!
そうは言ったものの、緊張で足はガクガクブルブルと震えている。
雄英高校を前に、僕はなかなか一歩を踏み出せないでいた。

かれこれ5分ほど固まっていたのではないだろうか?
僕の体内時計ではもう10分以上は経っている。
爆豪勝己
どけデク!!
すると、かっちゃんが僕の横を通り過ぎた。
ついビクッと体が勝手に反応をしてしまう。


   “個性が宿ると信じてワンチャンダイブ”


かっちゃんを見ると嫌でも思い出してしまうのだ。
緑谷出久
あ、ご…ごめん
かっちゃんは僕を横目で見てチッと舌打ちをした。
僕のこんなはっきりとしない返事が、かっちゃんの気に障るのだろうか?

…まあ、相性の問題なのだからもうどうしようもない。

そう気持ちを切り替えて足を一歩踏み出した瞬間、


ガッ

僕は石につまずいてしまった。

これは不吉すぎるだろ……!
これからの学校生活で友達ができなかったらどうしよう。
……というか、まず雄英高校に受かるのかが心配だ。



“ワンチャンダイブ”事件の後、僕は一人で帰っていた。

ヒーローに憧れるようになったきっかけ、そして僕の“個性”が発覚した日のことを思い出しながら。

……僕は無個性だ。
どんなにヒーローに憧れていても“個性”がないと、ヒーローにはなれないだろう。
ハァとため息をついていると、僕は“ヴィラン”に遭遇してしまった。
そして憧れのヒーローである「オールマイト」に助けてもらった。

オールマイト
もう大丈夫だ少年!私が来た!!
緑谷出久
あの、オールマイト!
緑谷出久
“個性”がなくてもヒーローは出来ますか!?
緑谷出久
“個性”のない人間でもあなたみたいになれますか?
そう訪ねたが「相応そうおうに現実を見なければな」と、あまり良い反応は帰ってこなかった。
そして、オールマイトの大切な秘密を知ってしまうことになる。


お母さんだけじゃなく憧れの人にも幼なじみにもヒーローになれないこと、現実を見ろと言われてしまった。
……僕はどうしたらいいんだ。
オールマイトにまでそう言われてしまったら僕はもう諦めるしかないじゃないか……。


そしてトボトボとうつむきながら帰っていると、一般人が“敵”に襲われている場面に遭遇した。

見ないように見ないようにとしていたが、ヒーローオタクが出てしまいつい見てしまう。
すると……

そこにはかっちゃんがいた。

なんと、襲われていた一般人とはかっちゃんのことだったのだ。

僕はいてもたってもいられなくなって、気がつけば“敵”に向かって走っていた。

自分でも馬鹿じゃないかと思う。
けど、体が勝手に動いたんだ。信じてほしい。
かっちゃんが驚いたというような顔をしている。
爆豪勝己
何でテメエが…!
緑谷出久
君が助けを求める顔をしてたから!!
結果、かっちゃんは僕ではなくオールマイトの手によって助けられた。

かっちゃんは「すごい」とヒーローや周りの大人から褒められていたが、僕は「危ないじゃないか!」とものすごく怒られてしまった。

……まあ怒られても仕方ない。
かっちゃんが無事でよかった。


ヒーローへの憧れはもうやめよう、そう思っていた時
オールマイト
やあ、少年!
オールマイトがやってきた。そして、
 
      

     「君は“ヒーロー”になれる!」
僕が最も言ってほしかった言葉を言ってくれた。

この日以来、僕にとっての「オールマイト」は憧れの人でもあり師匠という存在へと変わった。
あの後、オールマイトの個性は代々受け継がれてきたもので“OFAワン・フォー・オール”という名前だということを教えてもらった。

かなり衝撃の事実だったが、オールマイトならあり得ることなんだろう!多分。

そして約半年間、受け継ぐための特訓を毎日毎日頑張り続け、現在に至る。


ギリギリ試験までに間に合ってよかった…。









ん…?ちょっと待てよ。
これはもしかしてあの噂の走馬灯とかいうやつなのではないだろうか。
◯◯
大丈夫?
石でつまずいていたはずの僕の体が、いつの間にか空中に浮いている。
緑谷出久
え?


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