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第8話

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2024/02/25 01:00
ゲゲ郎
ここか
川の近くの温泉。
(なまえ)
あなた
はい
気に入って下さると良いのですが……
旦那様が着流しを抜いたので、私はパッと顔を逸らす。
ゲゲ郎
なんじゃ、今更
何度もわしの裸は見てるだろう
(なまえ)
あなた
い、いえ……まぁ……しかし……
久しぶりの旦那様だ。

ただでさえいっぱいいっぱいなのに、裸まで見せられるとどうしていいか分からない。

それに、夜の方は……
ゲゲ郎
なるほど、わしらについてくるのに
必死で裸を見てられる程余裕がないと
そういう事じゃな?
(なまえ)
あなた
顔から耳まで熱くなる。
ゲゲ郎
照れておるのか
本当に愛い奴じゃ
旦那様と居ると調子が狂う。

いつもの私はこんなでは無い。

旦那様や奥様は愛情表現が豊かな方達だ。

思った事をすぐに伝えてくださる。

なので、冷静を保っていられない。
ゲゲ郎
さて、入るとするかの
(なまえ)
あなた
着流し、お持ちいたします
ゲゲ郎
なんじゃ、一緒に入らんのか?
(なまえ)
あなた
は、入りません
旦那様は残念そうに唇を尖らせて、温泉に入った。
ゲゲ郎
ふぅ……良い湯じゃ
お主も足だけでも入ったらどうじゃ?
(なまえ)
あなた
…では、お言葉に甘えさせて頂きます
私は、少しはしたないが着物を捲り、岩場に座って足を入れる。
ゲゲ郎
久しぶりじゃのぉ
前はよく岩子と3人で入ったものじゃ
(なまえ)
あなた
……そうですね
ゲゲ郎
また入ろうなぁ
(なまえ)
あなた
……機会があれば
旦那様は私の足の横に座り、私の足に触れた。
(なまえ)
あなた
すると、旦那様は足に唇を落とした。
(なまえ)
あなた
!?き、汚いですッ!
ゲゲ郎
わしがしたいんじゃ
……駄目か?
少し眉を下げて、見上げてくる。

角度的に自然と上目遣いになっている。
(なまえ)
あなた
ゔぐ……ッ
この顔に弱い事を知っていてやってますね……?
(なまえ)
あなた
……ッお好きにどうぞ
すると、嬉しそうに旦那様は私の足を触り始めた。

私に向き合うように座り、私の足をまじまじと見ている。

なんだか気恥ずかしくなり、私は当たりを包んでいる霧に目を向ける。

旦那様は私の足の指に、自身の指を絡めたり、足裏を愛おしそうに親指で撫でたり、指先に唇を落としたり。

見なくても頭に旦那様が今、どんな顔をしているのかが容易く思い浮かべられてしまう。
ゲゲ郎
おお、これはこれは
旦那様が声を出したので、目を向けると、河童様が居た。
(なまえ)
あなた
お久しぶりです、河童様
河童様は笑った。
河童
仲がいいのぉ
私はハッとする。

今、旦那様は私の足に唇を落としていた。

……この状況は…………色々と誤解を招くのでは。
(なまえ)
あなた
も、申し訳ありません……
河童
いやいや、良いんじゃ良いんじゃ
幽霊族夫婦の寵愛を受けている狐が
いると言うのは妖怪の中では
有名な話じゃからのぉ
(なまえ)
あなた
申し訳ありません、私なんかが……
河童
寵愛の噂と共に貴女の育った環境の
事も耳に入ってくるからなぁ
理由を知れば納得するものじゃよ
(なまえ)
あなた
……旦那様と奥様はお優しいですから
河童
それだけじゃないと思うがの
お主の人柄にも惹かれたと思うぞ
(なまえ)
あなた
そんな……
河童
……育った環境が環境じゃから
あまり強くは言えんが……
あまり自分を卑下しちゃいかんよ
そう言って河童様は優しく笑った。
河童
それに、貴女がそう思っていては
愛している旦那や奥方に失礼じゃよ
(なまえ)
あなた
は、はい……気を付けます

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