放課後、私は先生に頼まれたプリントを届け終え、帰路につこうとしてた。
下駄箱につくと丁度、花満くんが靴を履き替えていた。
迷っている間に声をかけられ、私は今気づいたかのようなフリをしてしまう。
花満くんはかわいらしく微笑み、私が靴を履き替えるのを待ってくれた。
学校を出て二人で帰り始めると、花満くんは私の方を振り返り困ったように苦笑する。
花満くんは絶妙にかわいい角度で首を傾げ、ねだるような目で見つめてくる。
ドキッ
少しうつむき気味になっていた顔を思い切って上げると、花満くんはいつもとは違う優しい笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。
ドキッ ドキッ ドキッ
そう言って、私は花満くんの隣に並んだ。
隣で見る花満くんの笑顔は今までよりも近く感じた。
それは当たり前のことだけど、そういう物理的な距離の話ではない。
隣で笑顔の花満くんを見て、彼と仲良くなれていることがやっと実感できた。
一人で花満くんを撮っていた頃とは違う喜びが、胸いっぱいに、溢れだしてしまいそうなほど生まれている。
駅までの長い通学路は、二人で歩くととても短く感じる。いつまでもいつまでも歩いていたいと思ってしまうほど、楽しい時間だった。
2人で改札を通ろうとした時、すれ違った他校の制服を着た男の子が花満くんを呼び止める。
その男の子を見送る花満くんは、これまでに見たことがない悲痛そうな表情をしていた。
けど、それは一瞬で、彼はまたいつも通りの笑顔を私に向けてくれる。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。