第30話

エピローグ
68
2024/03/23 07:57
麻生咲希
麻生咲希
…私は目が覚めたとき、創が待っててくれて嬉しかった。
今でも、璃空ちゃんが死んでいて、黒幕が璃空ちゃんの弟さんだったとはとても思えない。
でも、これは本当なんだ。
イジメを見て見ぬふりした、私達のせいだ…
創も同じだろう。
そして、なにより、私のために里菜の告白を断ってくれた創がかっこよかった。
命を失うというのに、私への愛を持っててくれて…
私はみんなと同じ中学校へ転校する。
そこで… 
今度こそ、正しい生き方をしたい。
中木創
中木創
はじめ、目を覚ましたとき、オレは独りで、一刻も早く咲希が起きるのを待っていた。
拓哉、敬佑、秋人、葉太、蓮、仁、冬弥、優一。
みんな死んでしまった。
今でも信じられねぇ。
だから、オレはみんなの分生きなきゃなんだ。
なぁ、咲希。オレと一緒に来てくれて嬉しかった。
生き残れたというのに、オレの手を取ってくれて嬉しかった。
また、別の中学校でも、必ず幸せにする。そして、裏切らない。
友達も、お前も。
…中川、ごめんな…
妹尾千晴
妹尾千晴
「オレは男として生きる!」
家でそう、打ち明けた。始めは反対されたけど、家出すると言ったら、渋々認めてくれた。
そうだ… これがオレなんだ。
璃空。オレをとても綺麗だと褒めてくれた璃空。
お前、もうどこにもいないんだろ…?
本当に死んじまったのかよ…。ふざけんな。
でも、これはオレのせいだ。
オレが助けていれば、こうはならなかったのに。
だから、蒼空はジャンケン。させたんだよな…?
ようやくわかったよ。意味。
もう二度と見て見ぬふりはしない。
正々堂々、生きるから。
土井朋香
土井朋香
璃空ちゃん。私だよ、朋香。
今、終わりました。
蒼空くんが真犯人だなんて…
信じられないけど、信じるしか無いんだもんね。
それも全部… 私達のせいだし…
そういえば。
私、千晴、咲希ちゃん、創は同じ中学校へ転校するんだけど、綾子と航平は山名川中学校に行くんだって。
わざわざ遠いところへ…
でも、なにか目的があるんだろうね。きっと。
私、次の中学校で、イジメを止めてもらえるよう頑張ってみる。
「今日は転校生の方が来ていますー」
太田綾子
太田綾子
はじめまして!
太田綾子です!
3年間よろしくね!
松井航平
松井航平
…松井航平です。
綾子とは幼馴染です!
3年間よろしくな…!
ここが山名川中学校。
何だか、温かい雰囲気がする…
…あれ、あの子は…?
屋敷萌花
屋敷萌花
…萌花ちゃん…
中川蒼空
中川蒼空
山名川中学へ転校して…
萌花に全て話してやってほしい
…わかった
太田綾子
太田綾子
航平…!
松井航平
松井航平
…あぁ
待ってて、蒼空くん、萌花ちゃん。
そして、りく。
今全部終わらせるからー
中川蒼空
中川蒼空
ボクは、山名川中学が見える小高い丘に立っていた。
中川蒼空
中川蒼空
綾子…
やってくれた、よな…
あの後、大統領に1つだけお願いした。
そして…
…それは、叶えられた。
スマホを見る。
イジメによる自殺を日本政府が隠蔽していた。
悪質な事情聴取を行っていた記者が暗殺され続けている。
日本政府の信用はだだ下がり。
中川蒼空
中川蒼空
…ざまぁみろ
やっぱ、罰なしはおかしいもんな。
これは、もう単純に、璃空がどうのこうのとかじゃなくて、ボクの自己満足だ。
ふと、あるニュースを見た。
イジメ・差別をテーマにした劇
発案者の廣妙寺りおなさん(9)曰く
「私達に責任がある。
それをほっぽかしていいわけがない。
だからといって復讐に変えるのは間違いだ。
だから、伝えなければいけないんだ。」
中川蒼空
中川蒼空
小…学生、が?
…そういう人もいたか。
やっぱ、日本人みんな悪はおかしいよね。
そうだ…
相川紫音。
麻生咲希。
遠藤敬佑。
小野拓哉。
貝原玲奈。
木更津蓮。
西条仁。
富山翔子。
中木創。
花田日向。
花田光莉。
藤咲秋人。
矢部葉太…
こいつら、何も悪くないのに巻き込んだよな。
じゃあ… …償わなきゃ。
償ったところで許されるか分からない。
「ひとつ」で、足りるもんか。
でも、
でも…
中川蒼空
中川蒼空
井崎優一…
中川蒼空
中川蒼空
古賀佳純…
中川蒼空
中川蒼空
関雪奈…
中川蒼空
中川蒼空
三田冬弥…
中川蒼空
中川蒼空
若林里菜…
中川蒼空
中川蒼空
…中本美波…ッ!
お前らが奪ったのは璃空一人の命…
なわけ、ないだろ。
お前らは隠れた所でいくつものイジメを行い、その分命を傷つけている。
じゃあ、これで、おあいこだな。
お前らが償ったのは一人だけの命。
じゃあ…ボクだって、1つの命しか償いに使わない。
誰の命かって?
そんなの…
中川蒼空
中川蒼空
あは
中川蒼空
中川蒼空
あははははははははははははははは!
わかりきった、ことじゃないか?
ヘアピンを外した。
璃空の形見のヘアピンだ。
これで、いつまでも一緒だね。
大好きな、おねえちゃん。
ブスッー
黒く光ったヘアピンを思い切り脳天に突き立てた。
ブシャ、ブシャー、と勢いよく鮮血が流れる。
これで大丈夫。
ボクの死体なんて見つからなくていい。
でも、犯人がわかならない、なんてことはないから大丈夫。
犯人を書いた遺書を残しといたよ?
意識が薄れる。
視界の四方が白くブチンと爆ぜる。
ボク白々しい手に赤い赤い赤い血がふっかかる。
コントラストが美しい。
今、非常に眠たい。
寝る気なんてサラサラないのに、瞼が鉛のように重くなる。
そもそも、死ぬのなんて、こんな長くゆっくりなのかな?
そんなのどうでもいい。
ピジュッ、と切れ口から何かが飛び出した。
ああ、なんだ、脳味噌か。
自分の体内を直視しているのに、不安は感じなかった。
なんかもう、どうせ自分のだし?
体が重い。
光がしつこいくらい眩しくて、ボクには到底たどり着けない。
中川蒼空
中川蒼空
楽し… かった… な…
一緒に合唱大会でデュエットしたときも。
体育会で負傷した貴女を支えて水場に行ったのも。
宿題を忘れて、貴女も忘れていて、2人で泣きながら、終わらないよ〜、助けてよ〜、と言いながら、居残りしたことも。
そうだ…
移動教室さえも、楽しかったんだ。
…それに…
貴女が航平好きなことくらい知ってる。
だから、ボクには思うしか無い。
今、初めて、女で生まれればよかったと思った。
そしたら、「友達」として、嫉妬せずに愛せたのに。
中川蒼空
中川蒼空
あや… こ…
すべての感覚、空気、触感、思考を失った。

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